最近、不動産投資向けの融資が増えていることがニュースになっていますよね。
銀行が不動産を担保にさえ取れば何でもかんでも融資をする。その結果として、アパートが供給過剰になって、空室率が上昇していると。
この背景として、銀行がもはや通常の企業向け融資をするスタイルから逃避して、安易な貸金ビジネスに流れてしまっている風潮がある気がしてなりません。
審査能力を放棄した銀行
不動産向け融資は、不動産という担保を取ることができるので、銀行側に審査能力はそれほど必要ありません。
不動産向け融資をする際に、その不動産の収益性も銀行がチェックすることになっています。ところが、実際には不動産仲介会社や家賃保証会社に調査を外部委託して、その調査結果を鵜呑みにしているのが現実です。
このような銀行の審査能力低下ですが、これはカードローンの問題とも根っこは同じだと思います。
ちょうど、先日NHKのクローズアップ現代で、銀行が発行するカードローンによる貸出残高が急激に増えていることが報じられていました。
NHKによると、銀行カードローンビジネスは多くの場合、銀行単体ではなく、消費者金融とタッグを組んでいる。
実際の審査業務は銀行は消費者金融に丸投げ。
どの属性を持った利用者にどれだけ貸せるか、回収できるかのノウハウは消費者金融しか持っていないからです。
銀行はそのブランドという看板を貸しているだけ。
審査を請け負う消費者金融は、もし利用者が返済不能になった場合、銀行の損失額を全額保証します。
そのため、銀行は一切損をしない。
一方、消費者金融も、銀行から多額の手数料を受け取れるため、たとえ一部の利用者が返済不能になっても、全体として、儲けることができる。
銀行と消費者金融にとって、どちらもその強みを持ち寄った巧妙なビジネスモデルなんですね。
まあ、このビジネスモデル自体の是非は置いておいて、銀行が自分で融資審査を行わないという点は大変問題だと思うんですよね。
不動産向け融資がこれだけ急拡大しているのも、そもそも銀行自体が審査業務を放棄していることが原因にあると思うんです。
つまり、適切に貸出先を審査して、その事業の将来性を判断した上で、リスクを取って融資をするという金融機関の本業が疎かになっていると思うのです。
銀行の審査能力低下は不動産投資家にとってもマイナス
今は、日銀の金融緩和を元にカネ余りの状態になっています。
そのため、僕たち不動産投資家にとっては、融資が簡単に引けるとても幸せな時代です。
ただ、一方で、このように審査能力を失ってしまった銀行は、今後景気が悪くなったとたんに担保不足の物件からは次々と融資を引き下げるのではないかと危惧しています。
そして、本来なら有望な物件にも、景気が悪くなったという理由だけで融資をしてくれなくなる可能性が高いのではと。
なぜなら、その頃には銀行の中の審査能力はゼロになっていて、有望な貸出先を見極める力が無くなっているからです。
そのような状況になれば、僕たち不動産投資家も大きな損失です。
そうなる前に、ぜひとも銀行には本来の審査能力を取り戻し、カードローンのような手数料ビジネスに頼らず、本来の金融機関としての役割を果たしてほしいと思います。