不動産投資で成功するためには色んな能力や知識が求められる。良い物件を見極めるためには、収益計算が瞬時にできるだけの会計能力も必要だ。一種低層などの地域ごとに建ぺい率や容積率がどのくらい違うのかもすぐに把握できるだけの最低限の法律知識も必要だ。また、収益物件の家賃が割高なのか、割安で募集されているかも、瞬時に判断するマーケット感覚も必要だ。と、必要な能力や知識を列挙すればキリがないくらい幅広くなる。簡単に言うと、勉強化でないと不動産投資家は務まらないと思う。
さて、そんな色んな能力・知識の中で僕が最も重要だと思うものは、ずばりセルフコントロールだ。コントロールしなくてはならない自分の感情は大きく分けると2つある。
- 恐怖心
- 欲望
今回は、最初の「恐怖心」をいかにコントロールするかについて書いてみたい。
借金に対してのメンタルブロック
まだ不動産投資を初めていない人にとって最初に超えなければならないハードルは「莫大な借金を背負う」というメンタルブロックだろう。僕自身、自宅を購入する際に、人生で初めての借金を背負うことになった。既に複数の物件を所有する今になってみると、自宅の借り入れは大した金額では無いが、当時の僕にとっては一大事だった。カーローンすら組んだことのない当時の僕にとって、数千万円の住宅ローンは人生そのものを台無しにしてしまう可能性を秘めたとても危険なものだった。
ただ、住宅ローンに関して言えば、住宅購入するほとんどの人たちが誰しも通る道だ。周りにも住宅ローンを抱えて毎日せっせと仕事をしているサラリーマンも沢山いる。そのため、多少の恐怖心はあったが、皆同じようなものだと思えるとその恐怖を克服することができた。実際は、自宅の購入が決まってから引き渡しで決済をするまでの間に、僕は少しでも借入金額を減らすために必死になって貯金に励んだ。その成果?もあって、売買契約した時点よりは、200万円ほども借入金額を減らすことができた。当時はそれで随分と気が楽になったものだ。
しかし、当時売買を担当していた不動産会社の融資担当者からは、借りれるものはめいいっぱい借りておいたほうが良いですよ、とアドバイス?を言われた。彼いわく、住宅ローンの金利はこの世の中で最も低いものなので、こんなチャンスは人生で一度しかない。「僕だったら、住宅ローンはめいいっぱい借りて車買いますけどね、へへへ」と小狡い笑顔を僕に振り向けた。
当時の僕は、「は、この人何言ってるの? 借金なんて少ないほうが良いに決まってるじゃない。頭おかしいのか?」と思い、完全に無視していた。ただ、今の僕ならこの不動産会社の担当者の発言の意味がわかる。確かに住宅ローンほどオイシイ借金は無い。僕は、借り入れを増やしてまで新車に買い替えたりしないが、借り入れを増やすことで手元に現金を残せば良かったと思っている。手元に現金があればあるほど、有利な条件で収益不動産を購入することができるからだ。
こうして、僕はなけなしの貯金を全放出して、全力で住宅ローンの借入金額を減らした。
初めての収益不動産購入時はビビリまくり
さて、無事に自宅を手に入れた僕は、その後数年して初めての収益物件を購入することになる。収益物件を購入する際には9割ほどの借り入れを行ったのだが、その時の心理状態を紹介したい。
自宅とは違い、収益物件を購入するために借金をする人は自分の周りには皆無といった状況だった。数百万円の自己資金を投入する丈でも勇気がいるのに、その何倍もの借金を同時に背負うのである。万が一、収益物件で空室が連続して家賃が入ってこなければ自分の持ち出しになる。そして、持ち出しが続けば最終的に破産が見えてくる。そう考えると、収益物件を購入するために借金するのは、とても大きなリスクを背負い込んでしまうと感じた。
そのため、正直に言うと最初の一棟を購入するのは、なかなか勇気が出なかった。色んな物件を見に行くのだが、いざ買い付けを入れる段階になると、借金が返せないリスクが頭のなかでもたげてきて、進むことができなかった。まだ不動産を購入していない人の多くは、同じ気持ちだと思う。本当に莫大な借金を背負ってしまって良いのだろうかと。自分は20~30年もかけて借金を返済し続けられのだろうかと。
メンタルブロックを外してくれたのは師匠(メンター)だった
こうして借金に対するメンタルブロックを外せずに、物件購入に踏み切れなかった僕を見かねて、師匠である義理の父がアドバイスをくれた。義理の父は、過去に不動産会社を経営しており、引退した後も大家として生計を立てている。師匠のアドバイスは次のとおりだ。
- 収益物件を買うための借金は全然怖くない
- 自宅を購入するための借金(住宅ローン)のほうが全然怖い
僕は最初、師匠の言っていることが理解できなかった。他のサラリーマンの同僚たちも皆借りている住宅ローンのほうが怖いだって? しかし、その理由をよく聞いてみると目が覚める思いがした。自宅の住宅ローンはサラリーマンとしての自分が働けなくなったらすぐに返済が出来なくなるリスクがある。日本航空や山一證券といった大企業が破綻する世の中だ。いつ自分の勤めている会社がなくなるかもしれない。無くならないまでも、業績が悪くなれば給料が減ることもあるだろう。また、病気や怪我がもとで働けなくなる可能性もある。よく自営業者は体が資本だと言うが、僕はサラリーマンも同じだと思う。サラリーマンの場合、短期間の療養であれば健康保険から給与分の保険金が支払われるが、その期間は限られている。1年以上の長期間の療養になってしまうと手当ももらえなくなる。また、どうしても会社をやめないといけないケースもあるだろう。そうすると、すぐに住宅ローンの支払いができなくなる。長い人生何があるかわからない。
一方で、収益物件のための借金は、物件が返してくれる。大家がどこで何をしていようが、家賃さえ入って来れば確実に返済を行ってくれる。大家がどのような状態であっても関係ない。必要なのは収益が上がる物件を購入するだけだ。高度経済成長時代のように、新卒で入った会社で定年まで勤められ、更に給料も右肩上がりの時代であれば住宅ローンはリスクの低い借金だっただろう。しかし、今は違う。その点、収益物件は自分で稼いで、借金を返済してくれる。だから、収益物件の借金のほうが安全で、自宅の借金のほうが危険なのだと。
こうして、僕は収益物件を購入するための最初のハードルである、借金へのメンタルブロックを外すことができた。僕には師匠(義理の父)がいてくれて本当に良かったと思う。おまけに義理の父には、最初の収益物件を購入する際に売買契約にまで立ち会ってもらった。義理の父と出会わなければ、今の僕はない。本当に感謝しきれない。
不動産投資関連の書籍は沢山出ており、有名大家のブログも数え切れないくらいある。不動産投資のノウハウを手に入れるのはそう難しいことではない。ただ、僕の経験から、沢山の本やブログを読んでも中々メンタルブロックを破るのは簡単ではないと思う。そのためには、まずはメンター(師匠)を探すことが近道だと思う。やっぱり成功している人を間近に見ることで、本当に賃貸経営ができるという実感・イメージが湧いてくるからだ。メンタルブロックを外すせずに苦労している人は、大家の会等に出席して自分にあったメンターを探すのも有効だと思う。
次回は、次にコントロールしないといけない「欲望」について書いてみたい。お楽しみに。