都心のビルの空室率が過去無いほどに低下している。都心5区で3.60%まで低下している。需給の均衡点が5%と言われているから、明らかに供給よりも需要が多い。優良物件には常に次の入居希望者が「待ち」をしており、新規に空室が出れば、直ぐに埋まるというのが現実だ。
しかし、一方でビル賃料が満室状態にも関わらず下落に転じているという。これは何を指しているのだろうか。
2018年問題 大量供給を乗り越えられるか
こちらは有名なので、ご存じの方も多いと思うが、現在建築途中のオフィスビルが大量に存在している。都心を歩けばわかると思うが、至る所で建築中のビル工事を見かけるし、更地があるかと思えば、建築確認の立て看板が立っており、これから建築が始まる状態であることが多い。僕の近所の大崎広小路にある「ゆうぽうと」も現在解体途中である。恐らく築25年くらいだろうが、躯体はしっかりしており、外観も小奇麗でまだまだ使える印象がある。それなのに、解体して、新しいビルを建てようとしている。確かに建ぺい率や容積率に余裕があれば、もっと沢山の延床面積を持つ建物に建て替えられると思うが、明らかに資源の無駄遣いにしか見えない。RCなんて少なくとも50年は持つのだから本当はリノベーションするなりして既存資源を有効活用すべきだと思う。既存物件の活用よりも、新築を推進してきた国の政策の歪みに感じられる。やれやれ。
さて、これらの建築中のオフィスビルが2018年に大量に供給される。供給量は床面積80万㎡とも言われている。東京のオフィス新規需要が55万㎡であることから軽く上回ってしまう。果たしてこれだけ大量の供給を全て消化できるだろうか。企業達はこの供給飽和を見越して、家賃の高い物件には飛びつかなくなってきている。そのため、満室近い状況ながら、家賃は下落傾向に転じているのだ。
働き方改革で広いオフィスは不要になる
また、広いオフィスが不要になる理由として、働き方改革があげられる。ここで言う働き方改革とは、働くロケーションを自由に選択できることを意味する。海外との仕事のやり取りが多い人には当たり前だが、インターネットにさえつながれば、簡単に電話会議を行うことができる。資料も簡単に共有できるし、カメラをONにして、お互いの顔を見ながら話すこともできる。確かにブレインストーミングのようにFace to Faceで顔を見合わせながら会議をしたほうが効率的な場合も多いが、進捗を確認する定例会議や、一対一の簡単な打ち合わせなどは電話会議で十分だ。すると、社員は会社に来なくても自宅でテレワークすることが可能になる。在宅勤務が一般化すれば、会社に専用の座席を用意する必要もなくなる。既にフリーアドレスを採用している会社も存在し、オフィス面積の縮小に踏み切っている。特に営業マンを多くかかえる会社では、そもそも外出していることが多いため、フリーアドレスは適している。不動産会社などもフリーアドレス制に適した業種と言えるだろう。そのため、徐々に都心のオフィス需要は減少に向かっていくと思われる。ひょっとすると将来的には本社のオフィスすら必要なくなり、どうしてもface to faceの打ち合わせが必要な場合にだけ、レンタル会議室を借りるなんて時代が来るかもしれない。すると、自社オフィスは完全に不要になる。
まとめ
このように、オフィスの供給は増え続け、オフィス需要は減少することが近い将来ほぼ確実な状況だ。つまり、オフィスの空室率は今後上昇に転じるだろう。そして、オフィスビルの不動産価格は下落すると思われる。オフィスビルに投資を検討している人は、注意して投資先を選別したほうが良いと思う。
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