こんにちはJOJOです! 経営コンサルタント(中小企業診断士)です。東京都内で3棟20部屋のアパートも経営しています。
最近、後継者が不在のため、やむなく廃業する高齢の経営者が増えています。
なんと2025年には、中小企業経営者のうち64%が70歳以上になるそうです!
その数は全国で約245万人。
そのうち、120万人が後継者が未定とのことです。
これらの企業では、後継者が見つからない場合、やむなく廃業することになります。
しかも、東京商工リサーチの調査によれば廃業する企業の約半数(49.1%)が黒字経営とのこと。
非常にもったいないですね。
僕は大家を行っているのですが、周りの大家さんの中でも事業承継や相続について困っている人は沢山います。
大家業は一見気楽な稼業にも思えるかもしれませんが、実はれっきとした企業経営です。
大家には一経営者として様々な知識・ノウハウが求められます。
海千山千の不動産会社との交渉から、金融機関とのお付き合い、大規模修繕工事の実施など。
正直かける時間はそんなに大したことはありませんが、判断を一歩間違えるとすぐに資産を失う危険があります。
実際に地主系の大家さんの中には、息子さんに事業承継したは良いけど、不動産会社に騙されて泣く泣く土地を全て手放すことになった話は聞き飽きるくらい沢山あります。
そこで、今回は、そろそろ次の後継者に事業を承継したいと考えている中小企業の社長様向けに、事業承継を成功させるコツについてわかりやすく説明したいと思います。
事業承継支援活動については、1.事業承継計画策定・準備のプロセスと、2.実際の承継プロセスの2ステップに分けることができます。
本記事ではそれぞれ順番に説明していきますね。
また、2. 実際の承継プロセスについては、承継者の類型(子息、従業員、身内・従業員以外の候補者)ごとにケース別に説明を行っていきたいと思います。
事業承継計画策定・準備のプロセス
将来的に事業承継を予定している場合は、次の3つのステップに沿って準備を行っていくことが必要になります。
- 現行の経営者が事業承継に向けた準備の必要性を認識する
- 経営状況及び経営課題の分析・見える化
- 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
それぞれ詳しく説明していきたいと思います。
現行の経営者が事業承継に向けた準備の必要性を認識する
まず、経営者自身が事業承継には相応の準備と時間がかかるということを認識し、できる限り早期に承継準備に着手することが望ましいです。
一般的に事業承継に必要な時間は5-10年程度必要と言われています。
多くの企業経営者が70歳で引退をすることを鑑みると、60歳になった段階から徐々に事業承継の準備を勧めていくことが望ましいです。
そのため、将来的な事業承継を予定している経営者には、早い段階で事業承継の必要性を説明し、準備作業に着手させることが必要となります。
企業経営者の事業承継に関する課題意識を高めるためには、事前に承継タイミングや承継候補の有無等の事業承継診断を行うことも有効になります。
経営状況及び経営課題の分析・見える化
円滑に事業承継をするためには、承継者に対して企業全体の状況を正確に理解してもらう必要があります。
更にいうと、承継者にとって、企業自体の価値が高いものである必要があります。
そのためには、まず現状の経営状況及び経営課題を分析し、承継者や金融機関といった経営者以外の第三者にもわかりやすく説明できる状態にしておくことが重要です。
具体的には、過去の決算書の整理、所有不動産等の時価評価、月次売上・費用の集計・分析を行い、最新上経営実績を数値化(見える化)しておきます。
特に中小企業の場合、決算書の作成は税理士に任せきりで、経営者が十分に経営実績を理解していないことも多いです。
そのため、経営者自身も様々な経営指標を理解し、承継者や金融機関に説明できるように理解を深める必要があります。
また、自社を人(経営権)、資産、知的資産の3類型に分類し、それぞれの特徴を具体的に整理しておくことも重要です。
特に知的資産(経営理念、技術/ノウハウ、信用、人脈、顧客情報、知的財産権)については、暗黙知として蓄えられているものも多いため、経営者へのインタビューを通して具体化していく必要があります。
同時にドキュメントも整備し、見える化を進めることも大事です。
現状の経営状況の数値化・見える化が終わった後は、将来に向けての経営課題の把握を行います。
その際には、SWOT分析等の分析ツールの活用が望ましいです。
まず、自社にとって競争力のある商品・サービスを把握し自社の強みをあぶり出します。
一方で競合他社との競争が激しく売上が下がってきている商品・サービスを把握し、自社の弱みも抽出します。
そして市場環境の変化や競合他社の分析を行うことで自社にとっての機会・脅威を把握します。
事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
承継者が企業に対して価値を感じ、自ら望んで承継したくなるような気持ちになることが重要です。
そのためには、事業承継までに、経営改善を進め企業価値をできる限り向上させる必要があります。
具体的には2) 経営状況及び経営課題の分析・見える化で行ったSWOT分析の結果から、強みである事業ドメインに対して投資を行い競争力を一層高めると共に、弱みである事業ドメインからは撤退や事業売却を行うことになります。
中小企業は資金調達が困難な場合が多いですが、その場合は経営力向上計画を作成し、認定を受けることによって各種金融支援を得ることができます(投資資金の確保)。
また、将来性の無い事業から撤退したり、余剰資産を売却・除却することで、有利子負債を削減し経営資源のスリム化を図ることも重要です。
有利子負債を減らすことで、将来経営者として借入金を引き継ぐ候補者への心理ハードルを下げる効果もあります。
中小企業には経営者に権限が集中しているワンマン経営者も多いです。
大家業の場合は、実質的に経営者(大家)だけが経営に携わっているというパターンが多いですね。
この場合、経営者が変わることで、企業の意思決定に大きな変更が伴うリスクがあります。
そのため、将来の事業承継に向けて経営者以外の役員及び幹部候補生の従業員に対して予め権限委譲を進めることも大切です。
具体的には社内決裁規定等のマニュアルを整備することによって、役職者の職制・権限を明確化することが求められます。
実際の承継プロセス
つぎに3つの類型別に適切な承継プロセスを紹介したいと思います。
子息などの後継者が存在するが承継の意思がない場合
子息などの後継者が承継の意思を示さない場合、それは企業が子息にとって「引き継ぐに値する企業」ではないことの裏返しでもあります。
会社員と違って経営者は全ての事業運営に責任を持ち、多額の債務保証を求められることも多いです。
血を分けた子息であっても、よほど魅力的な企業でないと積極的に承継したいと思わないものです。
一方で、子息が後継者になることは、周りの親族、従業員及び金融機関の賛同も得やすく、資産承継もスムーズに行うことができるというメリットもあります。
そのため子息に承継の意思が無いからといって、安易に他の候補者を選定するのではなく、今一度自分の企業の価値を再検討し、価値を引き上げる余地がないのかどうかを見定めることが大切です。
もし、改善の余地があるのであれば、具体的な目標(例えば有利子負債を50%削減する、通期黒字化を達成する等)と期限を子息に提示して、その期限内の間は承継の判断を保留してもらうように働きかけるとよいでしょう。
そして、事業改善に本格的に取り組むことで、企業価値を向上させることも可能です。
その結果、万が一子息からの承継の同意が得られないとしても、企業価値が高まっていれば、他の候補者を探しやすくなります。
いずれにせよ、企業価値の向上には早期に取り組んでおいたほうが良いでしょう。
従業員のなかに承継させたい人物が存在する場合
この場合、候補となる従業員に対して、将来経営者として独り立ちできる能力・ノウハウの育成を図っていくことが必要となります。
従業員のスキルアップには社内教育と社外教育の2パターンが存在します。
社内教育の場合は、定期的に様々な部署を経験させて会社全体の業務を幅広く理解させるジョブローテーション計画を組むことも有益です。
経営者は会社全体の業務を把握し、必要な人脈を形成しておく必要があるからです。
また、経営企画部のような中枢部署に異動させて、経営者の意思決定のサポートをすることで、経営者としての思考プロセスを理解させることができます。
社外教育の場合は、社外の取引先や金融機関に出向させて自社以外の幅広い知見を身に付けさせる方法もあります。
また、商工会や金融機関が開催している後継者塾、経営革新塾に参加させることで、財務分析、労務管理といった経営業務を効率的に学習することができます。
従業員に承継させる場合、最大のハードルになるのが承継のための資金調達である。親族への承継と違って、単純に財産を相続することのできない従業員の場合は、基本的に自ら資金調達を行い、既存の経営者から株式並びに経営権を買い取ることが求められます。
株式・経営権の取得に必要な資金が足りない場合は、経営承継円滑化法の認定を受けることによって、日本政策金融公庫から株式取得資金の融資を受けることが可能になります。
また、企業を承継する際に、会社債務に対して金融機関から前経営者と同等の個人保証を求められることも多いです。
従業員に多額の借入の個人保証を納得させるのは困難であるため、できる限り個人保証解除の申し入れを金融機関に行うことが望ましいです。
実際に、「株)東京商工リサーチ「経営者保証に関するガイドライン認知度アンケート報 告書」(2016 年 2 月)」によれば、金融機関に経営者保証の解除を申し入れた結果、46%が経営者保証の解除を受けています。
そのため、早めに金融機関に事業承継の相談をすることが有効となります。
身内や社内に候補者が存在しない場合
この場合、親族・社外に候補者を求める必要がある。中小企業が独力で候補者を探すことは難しいため、一般的には中小企業専門のM&A民間仲介会社または国の事業引き継ぎ支援センターを利用することになります。
優良なスポンサー(買い手)を獲得するためには、企業価値の向上が必要になります。
そのため、スポンサー探しと並行して自社の強み事業の強化や内部統制体制の強化を行うことが大切です。
その結果、債務超過の解消、利益率の向上、フリーキャッシュフローの増加といった財務状況の改善を目指します。
スポンサーとのマッチングには数年かかることも珍しくないため、現経営者が引退するまで十分な時間的余裕がある時点で探し始めることが望ましいです。
また、スポンサーを探す際には、予め承継条件を明確にしておくことが大切です。
会社全体の継承なのか、一部門だけを承継させるのか。
また、従業員の雇用や処遇の維持を条件とするか、社名を残したいのかどうか、本店所在地を変更しないかどうか。
様々な観点から条件をあらかじめ決めておきます。
まとめ:後継者に事業を円滑に承継するコツ
最後に、中小企業が後継者に事業を円滑に承継するコツをまとめておきます。
- 後継者選定及び育成には時間がかかることを理解して、できるだけ早期に事業承継の準備を始める
- 自社だけで事業承継を行おうとせずに、経営承継円滑化法のような様々な国の制度・支援機関・専門家を活用する。
- 候補者にとって引き継ぐ価値があると感じてもらうために競争力強化、財務状況の改善等を通して企業価値を高める努力が必須となる。
事業承継や相続は遠い将来のことだと思って準備を先送りしていると、いざ承継したいと思っても後継者が見つからずやむなく廃業せざるを得ないケースも多いです。
事業承継には10年近くの長い年月が必要になりますから、早いうちから準備しておきましょう。
せっかくご自身が築き上げてきた優良な事業を次の世代に残さないのは、日本全体にとってみても大きな損失ですからね。
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