こんにちはJOJOです! 東京都内で3棟20部屋のアパートを経営しています。
不動産投資を行うためには、金融機関から借り入れを行う必要があります。
ただ、スルガ銀行の不正融資問題以降は、どの金融期間も不動産投資向け融資の審査基準を厳しくしています。
つまり、収益用不動産の担保評価を厳しく見るようになっているのです。
そのため金融機関から融資を引き出すためには、金融機関がどのような評価基準を使って、担保である不動産の評価を行っているのかを知っておく必要があります。
金融機関が行う不動産評価の手法は大きく2つです。
- 収益還元法
- 積算法
それぞれ初心者の方向けにやさしく説明していきますね。
- 金融機関が利用する不動産評価の方法の違いが理解できる
- 不動産評価の具体的な計算方法を理解できる
- 実際に具体例を見ながら、それぞれの評価方法で評価金額が異なることを理解できる
これならわかる収益還元法!
収益還元法とは、不動産の収益性に着目して不動産を評価する方法です。
「収益性」という言葉が難しいかもしれませんが、要は「不動産が生み出してくれるお金」ということですね。
その「不動産が生み出してくれるお金=収益金額」をもとに、不動産の価値を割り出す手法が、収益還元法と言われます。
収益還元法には、「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。
まずは、カンタンな直接還元法からみていきましょう。
直接還元法とは
ザックリいいますと、「一定期間の純収益を、還元利回りで還元して価格を導き出す」という方法です。
聞き慣れない用語が含まれているので、それぞれの意味をみていきましょう。
純収益
収益から経費などを引いた実質的な利益です。いわゆる「儲け」ですね。
還元利回り(表面利回り)
不動産投資に対する利回りを指します。100万円の投資に対して5万円の利益を得られる物件なら、還元利回りは「5%」となります。
直接還元法は、下記の計算式で求められます。
不動産価格(収益還元価格) = 1年間の純収益 ÷ 還元利回り(表面利回り)
実際に計算してみましょう。
例:年間の収益150万円、年間経費30万円、還元利回り(表面利回り)5%の物件
まずは「年間の純収益」を求めます。
年間収益150万円 - 年間経費30万円 = 純収益120万円
これを計算式に当てはめてみましょう。
不動産価格(収益還元価格) = 120万円 ÷ 0.05 = 2,400万円
この直接還元法のポイントは、適正な還元利回り(表面利回り)を算出することです。
一般的に、還元利回り(表面利回り)は2つの手順で算出されます。
- ざっくりしたエリアごとに不動産ポータルサイトが公表している平均的な利回りを調べる
- 実際に販売されている同じような条件(最寄り駅、構造、築年数、間取り)の物件を参考にしながら、より正確な利回りを求める
最初は1.のエリアごとの平均的な還元利回り(表面利回り)を算出します。
不動産ポータルサイトHOME’Sの中にある「見える!賃貸経営」機能を使うと便利です。
この機能では、都道府県や駅別に平均的な利回りを調べることができます。
例えば東京都だと、想定利回りは5.7%ということがわかります。
ただ、東京都といっても、物件の種類によって利回りはまったく異なります。
港区のような都心にある物件と、多摩地区にあるような物件では利回りは全然違います。
また、新築と築古でも違いますね。
そのため、このエリアごとの想定利回りはあくまで物件を探す際の参考情報にとどめておいたほうが良いでしょう。
次に、自分が購入しようと考えている物件と似たような条件(最寄り駅、構造、築年数、間取り)の販売物件を具体的にチェックします。
そして、このようにチェックした類似物件の平均利回りを参考にすると良いでしょう。
この平均利回りを元に、先ほどの直接還元法で不動産価格を算出します。
こうやって算出された価格が販売価格よりも高ければ、その物件はお買い得(割安)となります。
一方で、算出された価格が販売価格を下回っていれば、その物件は割高になります。
ただし、実際にはこの正確な還元利回り(表面利回り)を算出するのは多数の経験が必要になります。
なぜならば、自分が買いたい物件と同じ条件(最寄り駅、構造、築年数、間取り)で販売されている類似物件が常にあるとは限らないからです。
そのため、常日頃から自分が購入したいと考えているエリアの販売物件をこまめにチェックして、そのエリアの相場感を養う努力は必要になります。
最初のうちは、楽待や健美家といった不動産ポータルサイトを毎日コツコツとチェックするようにしましょう。
また、意外と正確に還元利回り(表面利回り)を算出できない金融機関の融資担当者も多いです。
融資担当者は別に不動産のプロではないですからね。
実際は金融機関も懇意にしている不動産会社からその時々の適正利回り(相場)をヒアリングして使っているケースも多いようです。
そのため、銀行に融資を打診する場合は、自分で調べた類似物件の表面利回りをいくつかサンプルとして提示すると良いと思います。
そして『類似物件の利回りは5%なのだけれども、自分の購入しようと考えている物件の利回りは6%あるから収益性が高い(割安である)』という風に、融資担当に説明しましょう。
実際のエビデンス(証拠)があるのとないのでは、説得力が大きく変わってきます。
また皆様が提出した類似物件の資料は金融機関内の稟議資料にも参考資料として添付されることになります。
こうした一手間が融資OKをもらうためにはとても大事です。
DCF法とは
DCF法は「ディスカウントキャッシュフロー法」の略で、将来得られると予測される利益と売却時の予想価格を「現在の価格」に割り引いて評価します。
注目して欲しいのは、「現在」や「将来」というワードです。
まずは、計算式をみてみましょう。
DCF法の計算式
不動産価格(収益還元価格) = 年間の収益 ÷ (1+割引率)のn乗 ・・・ + 売却価格 ÷ (1+割引率)のn乗
時間の経過を織り込むため、nには年数を入れて計算します。
正直、訳がわかりませんよね(^-^;)
僕も中小企業診断士の資格取得の際にガッツリ勉強するまではこのDCF法は良くわかりませんでした。
ただ、ご安心ください。
DCF法をご自身で計算する必要はありません。
金融機関が自動計算ソフトを使って計算してくれます。
そのため、不動産投資家の皆様はだいたいの考え方だけ理解して、金融機関の融資担当者からこの『DCF法』というワードを聞いた時にビビらなければOKです(*^-^)
覚えておかないといけないのは、次の1点だけです。
将来のお金の価値 ≠ 現在のお金の価値
例えば、今スグに100万円くれる人と、10年後に100万円をくれる人の2者がいるとしますよね。
皆様はどちらが良いですか?
今スグ100万円くれる人ですよね。
じゃあ、なんで今スグ100万円くれる人のほうが良いかと言うと、それは今もらって10年間資産運用しておけば、将来もらえる金額が増えるからです。
例えば今スグ100万円もらって、利回り3%の投資信託を購入するとします。
そして、この100万円を10年間3%の利回りで運用できたとすると、10年後には利息が30万円(毎年3万円 ✕ 10年)もらえます。
つまり10年後には130万円に増えるわけです。
だったら、10年後に100万円もらうよりも、今スグ100万円もらったほうが得ですよね。
つまり、時間の経過とともにお金の価値は増えるわけです。
逆にいうと、将来もらえるお金の価値は、現在に直すと少なくなるわけです。
この考え方を『現在価値に割り引く』と言います。
たとえば、100万円を金利2%で預金した場合、1年後には100万円×1.02で102万円になります。
逆に、1年後の100万円を金利2%分「割引く」と、現在の価値は100万円÷1.02で、約98万円となります。
このように、通常の投資とは逆の考え方で「現在の価格」を導き出すのがDCF法の特徴です。
なかなかわかりにくいと思いますので、実際に計算してみましょう。
例:5年後売却予想価格2,000万円、家賃収益年間200万円、割引率7%の物件
年数 | 計算式 | 収益 |
1年目 | 200万円÷(1+0.07)= | 186万9159円 |
2年目 | 200万円÷(1+0.07)2乗= | 174万6877円 |
3年目 | 200万円÷(1+0.07)3乗= | 163万2596円 |
4年目 | 200万円÷(1+0.07)4乗= | 152万5790円 |
5年目 | 200万円÷(1+0.07)5乗= | 142万5972円 |
合計収益 | 820万0394円 |
5年後に購入金額と同じ2,000万円で売却できるとして、売却価格の現在価値は次の通りとなります。
2,000万円÷(1+0.07)5乗= 1,425万9724円
収益と合計すると、
820万0394円 + 1425万9724円 = 2,246万0118円
この割引率は金融機関によって採用している数字が異なります。
現在では7%を採用しているところが多いようです。
正確に理解しようとすると少し難しいですが、実務上は将来の売却価格とそれまでの家賃収入をベースに現在の価値を算出するやり方があるんだな~くらいに理解しておいておけばOKです。
積算法はカンタン!
積算法は、具体的な担保評価から物件の価値を導き出す方法です。
積算価格 = 土地の価格 + 建物の価格
なお、土地の価格は下記の式で求めます。
土地の価格 = 路線価×土地の広さ(平米)
たとえば、土地の広さが100㎡で路線価が10万円の場合、土地の価格は1,000万円です。なお、路線価は国税庁のホームページで簡単に調べることができます。
建物の価格は下記の式で求めます。
建物の価格 = 再調達価格 × 建物面積 × (残存年数 ÷ 法定耐用年数)
法定耐用年数は、建物の構造によって決められています。
構造 | 再調達価格 |
木造 | 15万円/㎡ |
軽量鉄骨 | 15万円/㎡ |
重量鉄骨 | 18万円/㎡ |
鉄筋コンクリート(RC) | 20万円/㎡ |
たとえば、軽量鉄骨構造60㎡の物件なら、15万円×60㎡ = 再調達価格900万円です。
下記の物件を例にして、実際に積算価格を算出してみましょう。
- RCマンション 築22年
- 土地面積 200㎡
- 路線価8万円/㎡
- 建物面積 400㎡
この物件の積算価格は、「200㎡×8万円+400㎡×20万円×(残存25年÷耐用年数47年) = 約5,855万円」となりますね。
収益還元法と積算法では同じ物件でも評価額が変わる
上記で見てきた通り、収益還元法と積算法はまったく異なる計算方法です。
そのため、同じ物件でも、それぞれ評価額は変わる可能性が高いです。
実際の物件を使って計算してみましょう。
神奈川県小田原市本町 RCマンション
- 販売価格6,300万円
- 表面利回り8.50%
- 想定年間収入 約536万円
- 路線価 11万円
- 土地面積 約110㎡
- 建物面積 約295㎡
- 諸費用・公租公課は25%とする
収益還元法(直接還元法)の場合
536万円(1-0.25)÷8.5% = 約4,729万円
積算法の場合
110㎡×11万円+295㎡×20万円×(17÷30) = 約4,553万円
この物件の場合、収益還元法の方がやや高く算出されました。
一般的には、土地の実勢価格が路線価よりも圧倒的に高い都市部では収益還元の方が高くなります。
一方で、土地が安く、建物が大きい地方の物件だと積算法の方が高くなります。
そのため、都市部の物件を購入される方は、オリックス銀行や西武信用金庫のような収益還元法を重視する金融機関の方が相性が良いでしょう。
一方で、地方物件を購入される方は、都市銀行や地銀といった積算価値を重視する金融機関の方が相性が良いと言えます。
金融機関ごとの評価方法と物件の相性を理解すれば、融資審査を通しやすくできるでしょう。
まとめ
今回は金融機関が利用する3つの不動産評価方法について紹介させていただきました。
- 収益還元法(直接還元法)
- 収益還元法(DCF法)
- 積算法
実務的には直接還元法と積算法の両方で不動産価値を算出してみて、それぞれが販売価格とどの程度乖離があるかをチェックします。
直接還元法と積算法で求めた金額が販売価格よりも高い場合にはお買い得物件である可能性が高くなります。
直接還元法で有利な評価が出た場合は、直接還元法を重視する金融機関に融資を打診します。
または、積算法で有利な評価がでた場合は逆に、積算法を重視する金融機関に融資を打診します。
この組み合わせさえ理解していれば、融資を引き出す可能性はグッと高くなると思います。
評価法の違いと金融機関の評価基準をしっかり理解して、融資を獲得していきましょう!
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