みなさん、50年住宅ローンって聞いたことありますか?
最近、住信SBIネット銀行が住宅ローンの最長借入期間を50年に延長しました。
住宅ローンの借入期間は長らく最長35年間だったので、一気に15年も延長されることになります。
住信SBIネット銀行のホームページによれば、50年住宅ローンを導入した背景は次の通りです。
近年の住宅市場の傾向として、円安や石油価格等の影響を受けた資材価格高騰に加え、 ZEH (ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ 省エネなど高性能住宅の普及やニーズの高まり等が要因として戸建・マンションともに価格高騰の状態が継続しております。この価格上昇は今後も継続する見込みであり、住宅購入を検討する際に消費者の大きな負担となるとともに、住宅ローン借入に関してもハードルが高くなると考えております。
住信SBIネット銀行では、従来より住宅ローンの借入期間を最長35年までとしてきましたが、上記住宅ローン市場の変化や住宅購入を検討されるお客さまの若年齢化を鑑み、借入期間を最長50年までとすることで、よりお客さまのニーズにお応えする商品へと改定を行いました。
要約すると、
「住宅価格が上昇し、毎月の住宅ローン返済額も増えた。このままだと、家を買う人も、住宅ローンを組める人も少なくなるので、借入期間を延ばすことで毎月の返済額を少なくするよ。だから、今まで通り住宅買って、ローンも組んでね」
といった感じでしょうか。
東京23区内の新築マンション平均価格は1.3億円まで上がっています。
このまま住宅の価格が上がり続けると、購入できる層が限られてきます。
共働きのパワーカップルでも1億円を超えると厳しくなってくるのではないでしょうか。
このような背景から、この新しい住宅ローンが誕生したんです。
実は、住信SBIネット銀行の前にも50年住宅ローンを提供する金融機関は存在していました。
フラット50と常陽銀行、筑波銀行、西日本シティ銀行、宮崎銀行でも50年住宅ローンは提供されていました。
ただ、フラット50は全期間固定金利(2.23%)であり、0.3%台で借りることができる変動金利に比べると高くなってしまいます。
他の銀行は全て地方銀行です。つまり、その銀行の営業エリア内に居住していないと住宅ローンが組めません。
そのため、変動金利型の50年住宅ローンを組めるのは、一部の地方に住んでいる方限定だったのです。
それが、住信SBIネット銀行の登場で大きく変わります。
住信SBIネット銀行はネット銀行のため、全国どの地域にお住いの方でも住宅ローンを組むことができます。
つまり、不動産価格が高額な首都圏や関西圏で、はじめて変動金利で50年住宅ローンが組めるようになったのです。
しかも金利は0.47%とかなり低いです(35年ローンに対して+0.15%上乗せ)。
今回は、不動産投資家としての視点から、この50年住宅ローンのメリット・デメリットと今後の不動産価格の推移予測についてお話ししましょう。
住宅ローンを50年借りるメリット
月々の返済を減らせる
借入期間が長期になればなるほど、毎月の返済額は減少します。
例えば、同じ金利で35年ローンと50年ローンでは毎月の返済額は次のように異なります。
8,000万円を金利0.5%で借りた場合の、毎月の返済額
35年ローン | 207,668円 |
---|---|
50年ローン | 150,721円 |
なんと毎月5万円も返済額が減ります。
長い人生で何が起きるかわからないので、月々の返済を減らし、人生のイベントに備えるのはある意味賢いと言えます。
結婚や子供の教育費など、人生には住宅ローン以上の支出もありますから。
また、返済が少なくなった分を、他の投資商品で運用するという方法もあります。
金利0.5%を上回るリターンを上げる投資商品を見つけるのは難しくありません。
アメリカの長期国債でも4%以上の利回りがあります。
もちろん、不動産投資を始めるための頭金に充当しても良いと思います。
団体信用生命保険も長く加入できる
フラット以外の住宅ローンでは団信加入が必須です。
最近の団信の拡充はすごいです。
死亡保障は当然ながら、がん診断または脳卒中・急性心筋梗塞もカバーされます。
2人に1人がガンになると言われている時代ですので、団体信用生命保険を50年つけれれば、かなりの確率で保険が返ってくるのではないでしょうか。
まあ、自分の身体で博打を打つみたいで、若干気が引けますが。
なんにせよ、自分に何かあっても、残された家族が保険金を手に入れられるのは、大きなメリットです。
住宅ローンを50年借りるデメリット
定年後もローンの支払いが続く
50年住宅ローンを30歳の時に組むと、完済時の年齢は80歳です。
最近は医療も進歩しているため、人生100年時代と言われています。
そのため、今後多くの人が80歳はまだまだ元気かもしれませんが、80歳まで働き続けられるものでしょうか?
いまだに大企業の7割は定年60歳のままです。65歳まで雇用延長したとしても給料は半分以下に減ってしまいます。
そして、65歳からは多くの方が無職になってしまいます。
そう考えると、50年間も住宅ローンを返済し続けるのは無理なんじゃない?という声もあるでしょう。
実は、そんなことは金融機関もわかっているのですよ。誰も80歳まで働けるなんて思ってません。
もっというと、この50年住宅ローンは完済を想定していないんです。住み替えや売却が前提の商品なんですよ。
それに、今や3人に1人は離婚する時代です。
離婚した場合、元の住居は売却されることが多いです。
なので、売却しても残債がしっかりと完済できる資産価値が高い物件に限定して、金融機関は50年ローンを出すのではないかと予想します。
残債割れのリスクが高い
毎月の返済額が少ないということは、それだけ元本の返済スピードが遅いということです。
ぶっちゃけ借入期間50年の住宅ローンの残債は全然減らないと思います。
僕は35年ローンを組んで自宅を購入しました。
購入して13年経つのですが、まだまだ残債はたっぷり残ってます。
最初に借りた金額が4,500万円だったのですが、今でも2,900万円近く残債が残っています。
13年間も返済を続けても、まだ2/3も残債が残っているのです。
これが50年ローンだと、もっと残債の減りは少ないです。
基本的に住宅は経年とともに価値が減少します。
なぜかというと、建物や設備は劣化するからです。
土地は劣化しませんが、不動産ニーズによって価値が変動します。
都心のようにニーズが高まれば土地価値は上がりますし、地方のように人口が減少して居住ニーズが減れば、価値は下がります。
都心のマンションみたいに毎年価値がどんどんと上がる物件もありますが、日本全国で見れば少数派でしょう。
そのため、基本的に住宅は毎年価値が減少していきます。
一方でローンを50年という長期で組むと、残債の減るスピードが遅いです。
つまり、残債よりも、売却可能価格が低くなってしまう『残債割れ』リスクが高いのです。
残債割れの状態ですと、物件を売りたくても売ることができません。
50年住宅ローンと相性の良い人とは?
このように、50年住宅ローンにはメリットとデメリットが存在します。
そのため、誰にでもお勧めできるものではないのですね。
ただ、この50年住宅ローンと相性の良い人もいます。
それは、都会に住む高属性サラリーマンです。
50年住宅ローンの最大のデメリットは『残債割れリスク』です。
転勤、離婚、介護、などの意図しないライフイベントが起きた時に、すぐに売れる物件である必要があります。
この条件を満たすためには、都心のように価格上昇が見込めるエリアの物件である必要があります。
前述した通り、50年ローンだと残債が減るスピードは遅いです。建物が劣化するスピードよりも残債が減るスピードの方が遅いです。
そのため、基本的に土地価値が上がるエリアでないと、残債割れが起きる可能性が高くなります。
逆に、毎年、資産価値が上がる物件であれば、残債割れを心配する必要はありません。
購入価格以上の高値で売れるのであれば、極端な話、元本が減ってなくても損をしません。
むしろ、値上がりした分だけ、儲けることができます。
そのため、50年住宅ローンと相性が良いのは、都心のタワマンのように今後も値上がりが確実視される不動産といえます。
世の中はデフレからインフレへと変わりました。
資材費、人件費、設備費、すべての価格が上昇しています。
また、都市部への人口流入は今後も続きます。
そう考えると、東京や大阪といった大都市の住宅価格は今後も上がり続ける可能性が高いと思います。
というより、下がる要因が見当たらないのですね。
このようなエリアで自宅を購入すれば、残債割れのリスクはほとんどありません。
ただ、このような好立地の不動産は既に価格が高いです。
前述した通り、東京の新築マンション平均価格は1.3億円です。
なので、これだけ高額な住宅ローンを組めるのは、高属性サラリーマンや士業に限られることになります。
そう考えると、この50年住宅ローンを使ってよいのは、大都市に住宅を購入する高属性サラリーマンに限られることになります。
人口減少とともに不動産価格が下落する可能性が高い地方で、50年住宅ローンを組むのはお勧めできません。残債割れのリスクが高いからです。
50年住宅ローンが都会の不動産価格を押し上げる
今後も値上がりを期待できる大都市のマンション・戸建を購入する方は、この50年住宅ローンを組むでしょう。
残債割れのリスクがないのであれば、毎月の返済額が少ない方が良いに決まっているからです。
また、50年ローンが登場したことで、毎月の返済額が低くなり、より低い年収の方でも大都市の住宅を購入できるようになります。つまり、大都市の住宅ニーズが一層高まることになります。
そして、大都市の不動産価格が更に上昇します。特にエリートサラリーマンに人気のタワーマンションの価格は大きく上昇することでしょう。
20代で都心のマンションを購入することができれば、今後の資産形成に非常に有利です。
仮に僕が今20代で、一部上場企業のエリートサラリーマンだったら、億越えのマンションを購入するか?
ぶっちゃけ難しい判断ですね。
今でこそ不動産投資の知識も経験もありますが、20代の頃はまだ社会人になって数年しか経ってないです。
投資リテラシーもほとんどないでしょう。
恐らく怖くて手が出ないかもしれません。
ただ、今の知識と経験があるならば、20代の内に都心に自宅を買うと思います。
もちろん給料はまだ高くないので、50年住宅ローンを活用して、毎月の返済額を抑えます。
ただ、好立地の不動産であれば、自分が支払えるMAXの物件を狙うと思います。
事業用と違って、住宅ローンは金利も低いし、借入年数も長い超優れた金融商品です。
この金融商品のメリットを最大限に活かして、今後も値上がりが見込めるエリアでマンションもしくは戸建を購入するでしょう。
だって、金利0.5%で50年間も融資を受けられる融資なんて、住宅ローン以外には存在しないですから。
まあ、20代の僕は会社の給料を全部飲み代に使っていたケツの青いガキンチョだったので、やはり買えなかったと思いますけどね(負け惜しみです)。
僕と違って最近の20代は投資リテラシーをもっているので、この50年ローンを使って都心のマンションを購入する層も多いでしょう。そして、不動産価格も上昇し続けるのでしょう。
まとめ
50年住宅ローンは新しい金融商品で、将来的な不動産価格の上昇を前提としています。
都心エリアでの利用にはメリットがあるものの、価格が下落する地域では「残債割れのリスク」が高いため、慎重に検討する必要がありますね。
また、50年ローンは都会の不動産価格、特にマンション価格を押し上げる効果があると思います。
属性が高く、リスクを取れる人にとっては投資チャンスともいえます。
ご自身の属性と、取れるリスクを考えながら、50年住宅ローンを使うかどうか検討してもらえばよいかと思います。
ただ、くれぐれも無理はしないようにしてくださいね!
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