こんにちはJOJOです! 東京23区でアパート4棟32部屋の大家をしています。
スルガ銀行でシェアハウス向けに不正融資を受けた方向けには、金利引下げや代位弁済が検討されているようですね。
このような方は高値で物件をつかみ、しかも4.5%もの高金利でフルローンを借りています。
どう考えても儲かる物件ではなかったので、シェアハウス向けオーナーの救済に向けて進んでいるのは良いことですね。
ただ、スルガ銀行の不動産投資向け融資の残高は2兆円近くあります。
一方でシェアハウス向け融資は1,000億円程度だったため、実際は一般の収益不動産(多くは一棟マンション)向け融資の方が規模が大きいわけです。
そして、これらの一般の収益不動産を購入した投資家に対しては救済策はありません。
シェアハウスではなくとも、同じ様に不動産会社から高値で物件を売りつけられて、今でも高い金利負担に苦しんでいる投資家は全国に大勢います。
そして残念ながらスルガ銀行で融資を受けている方の中には破綻予備軍が多く含まれていると思われます。
現在まだこの問題は表面化してきませんが、今後数年の内に運営難に苦しむ不動産投資家が多数出てくると思います。
今回は、スルガ銀行で借りて地方築古マンションを購入した人の具体的な収支を見ながら、実際にどのくらい運営が厳しいかを説明します。
そして、記事最後には、どうすればこの窮地を脱出できるかについて、僕なりの見解をまとめています。
地方築古マンションを購入して困っている人の参考になれば幸いです。
地方築古マンションの具体的なケース
スルガ銀行が得意としていたのは、地方の築古一棟ものマンションへの融資です。
一般の銀行は、建物の法定耐用年数以内でしか融資期間を設定しないのですけど、スルガ銀行はRCまたは鉄骨造であれば法定耐用年数を超える融資期間を設定してくれてました。
そのため、地方の築古一棟マンションを購入する場合、自然とスルガ銀行からの融資が前提になります。
今回は、具体的な宇都宮市の築古マンションのケースを見ていきたいと思います。
物件スペック
- 所在地:栃木県宇都宮市 宇都宮駅からバス19分
- 築年月:1990年10月(築27年)
- 建物構造:重量鉄骨造3階建 総戸数27戸
- 価格:9,800万円
- 満室時年収:1,019万円
- 利回り:10.40%
- 建物面積:570.24m²
- 土地面積:608.74m²【184.14坪】
- 間取り:1K×27戸
これは大手不動産投資ポータルサイトで実際に売りに出されている物件です。
こちらを、スルガ銀行でフルローンで購入した場合の収支を具体的にシミュレーションしてみました。
購入条件
まず、物件購入の際には、1円も自己資金を使わないことを想定します。
物件価格だけでなく、仲介手数料等の諸経費も全て借り入れます。いわゆるオーバーローンです。
- 物件価格:9,800万円
- 諸経費:500万円(仲介手数料、登記費用、火災保険等)
- 合計:1億300万円
総額で、1億300万円をスルガ銀行から借り入れるとします。
借入条件は次の通りです。
- 融資期間:30年
- 金利:4.5%
年間収支
次に、年間の収支をシミュレーションしてみたいと思います。
まずは、実際の家賃収入から考えていきます。
現実的な家賃収入
想定年収が1,019万円ですが、これは満室の場合です。
当たり前ですけど、現実は満室がずーっと続くことなんてありえません。
そのため、現実的な入居率を計算しないといけません。
僕は物件の立地によって首都圏の入居率は大きく3ランクに分かれると考えています。
- レベル1(都内23区等の中心地):入居率92.5%
- レベル2(神奈川、千葉、埼玉で都心から電車で1時間程度のエリア):入居率87.5%
- レベル3(栃木、茨城、群馬で、都心から電車で2時間程度のエリア):入居率75%
今回の宇都宮市はレベル3に該当します。
入居率75%というのがイメージしにくいと思いますので、もう少し具体的にお話します。
10部屋のマンションがあります。
平均入居期間が3年超と想定すると、年間の退去数は3部屋になります。
そして、空室が出た部屋に次の入居者が入るまでの期間を10ヶ月と想定します。
そうすると入居率は75%になります。
レベル3のような首都圏郊外のエリアになると、2月、3月の繁忙期を逃すと次の繁忙期まで1年間入居者がつかないことは普通です。
部屋探しをしている人の絶対数が少ないからです。
もちろん、様々な入居付けのノウハウをお持ちの大家さんの中には、これ以上の入居率を実現している方もいます。
ただ、そのような方は少数派であり、それなりに労力をかける必要があります。
そのため、特別なノウハウも持っていないし、サラリーマンと兼業のため、そんなに労力をかけることができないという投資家にとっては、入居率75%というのは現実的な数字だと思います。
そのため、現実的な家賃年収は次の通りとなります。
1,019万円 ✕ 75% = 764万円
支出
次にキャッシュフローベースの年間支出を見ていきます。
主要な項目は次の通りです。
- 借入金返済:625万円
- 管理費:38万円(家賃年収の5%)
- 広告費:28万円(空室一部屋あたり1ヶ月分)
- 修繕費:134万円(空室一部屋あたり15万円)
- 固定資産税:85万円
- 合計:910万円
修繕費が多いと思うかもしれませんけど、これくらいかかります。
この物件は27部屋あり、毎年3割の9部屋弱が入れ替わると想定しています。
築年数が27年と古いので、クロスやフローリングの補修が必要でしょう。エアコンも入れ替えないといけないかもしれません。
そのため、一部屋15万円くらいは修繕費を見ていたほうが良いと思います。
収支
- 収入:764万円
- 支出:910万円
- 収支:△146万円(マイナス)
この時点で、既にマイナスです。
つまり、毎月12万円くらい持ち出しが発生している計算になります。
すでに、投資が失敗していますね。。
上記はキャッシュフローベースですが、会計上の損益を計算しても赤字です。
つまり法人税の支払いはないということです。
法人税の支払いがなくてもキャッシュフローが赤字というのは根本的にダメですね。
もちろん、買い主は購入時点ではここまで毎月の収支がマイナスになるとは思っていません。
購入した時点ではレントロール(実際の家賃管理表)は改ざんされて、満室でしたからね。
また改ざんされていないとしても、売り主が広告料を半年分くらいはずんで、売却時点で無理矢理、満室にしていたケースもあります。
ここまで空室を埋めるのが難しいとは夢にも思わなかったと思います。
また、中には、『俺が本気になって空室対策すれば、満室経営も可能だ!』という自信をお持ちの方もいます。
実際にスルガ銀行で融資を受けている方は、医師や一部上場企業のサラリーマンがほとんどなので、それなりに本業で成果を上げている方が多いです。
なので、そのように自信を持つのも不思議ではありませんね。
ただ、現実的に首都圏郊外で満室経営をするのはとても難しく、不動産会社の自社物件ですら空室があるものも多数あります。
なので、地方で物件を購入する際には、現実的な入居率を想定したほうが良いと思います。
売却時のとんでもない収支
このように年間でマイナスのキャッシュフローに陥ると、多くの投資家が売却を考えます。
そして、今までは、銀行がどんどん融資をしてくれていたので、売却したとしても、同じくらいの値段で売れるケースがほとんどでした。
そのため、年間の収支で数百万円損失を計上するくらいで、損切りができていたんですね。
ところが
スルガ銀行問題をきっかけに、ものすごい勢いでほとんどの銀行の融資が閉まりました。
もうフルローンを出してくれる銀行なんてありません。
もちろん、スルガ銀行は完全に融資をストップしています。
そのため、今までみたいに高値では売却できなくなったのですね。
具体的に、売却可能な金額をシミュレーションしてみましょう。
売却可能価格
売却が可能な価格とは、銀行の融資が出る価格のことです。
基本的に、銀行は物件の担保価値を積算評価という手法を利用して算出します。
そして算出された積算価値がMAXの融資金額になります。
多くの銀行は、この積算価値に対して掛目を入れて融資可能金額を算出するので、実際の融資金額は積算価値の6-8割程度になることが多いです。
ただ、ここでは、わかりやすくするため、積算価格=融資金額=売却可能価格だとします。
まず、建物の積算価値を出しましょう。
建物は年数が経つにつれ、価値が下がります。
新築時は100%で、耐用年数が終了すると0%です。
この物件を購入してから5年後に売却するとします。
購入時点で築27年ですから、売却時点では築32年となります。
鉄骨造の耐用年数は34年ですから、残存耐用年数(使用可能な年数)は2年となります。
つまり、建物の価値は、新築時の2/34しかないということです。
新築時の建物の調達価格を1㎡あたり25万円と仮定して、残りの残存年数分しか価値が残らないとすると次の計算になります。
1億4500万円(新築時)✕ 2/34 = 850万円
34年経っても、まだまだ立派に使われている建物はたくさんある!と思うかもしれません。
確かに現実は耐用年数を超えて使われているケースも多いですが、日本の税制は耐用年数を超えた建物に価値を認めません。
そして、日本の銀行の多くも、税制にのっとって建物価値を算出しているのです。
厳しいですが、これが日本の金融機関の現実です。
次に土地の価値を算出します。
土地は路線価をベースに算出されます。
路線価というのは、相続税を算出するために国税局が定めている地価のことです。
この物件の路線価は1㎡あたり56,000円です。
そのため、土地全体の路線価は3,400万円となります。
そして、この3,400万円がそのまま土地の積算価値となります。
ここで、建物、土地全体の積算価値が出揃いました。
- 建物:850万円
- 土地:3,400万円
- 合計:4,250万円
そして、この価格が、融資が出る最大金額になります。
先ほど述べたように、これからは融資可能価格=売却価格となります。
今までのように、物件の収益性を加味して、融資額を上乗せする銀行はほぼゼロになってしまいました。
融資がつかなければ、当然買い手も購入できません。
そのため、4,250万円でしか売却できないことになるのです。
なんか、ずいぶん値段下がってしまいましたね。。
驚きの残債!
問題は残債の金額です。
購入後5年間返済は進みますが、金利4.5%、融資期間30年という条件で借りているため、元本の返済がほとんど進みません。
具体的には、次の通りです。
- 購入時残債:1億300万円
- 5年後残債:9,400万円
ここで、アレっと思いの方。鋭いです!
残債9,400万円に対して、売却金額が4,250万円なんです。
つまり、物件が売却できても、5,150万円の借金が残るのです。
実際は、残債を完済するまで銀行は抵当権を外してくれませんから、この物件は売却することができません。
5年間トータルの収支
ここで、仮に5年間物件を保持し、売却価格と残債との差分は手持ちの現金を使って返済し、なんとか売却したとします。
その場合の、5年間のトータル収支は次の通りです。
- 5年間のキャッシュフロー:△146万円 ✕ 5年間 = △730万円
- 売却時のキャッシュフロー:△5,150万円
- 合計キャッシュフロー:△5,880万円
約6,000万円のマイナスです。。
地方の築古マンションをフルローンで購入することの恐ろしさが十分お分かりいただけたと思います。
本当に、ヤバイですねー。
しかも、このような状態にいる投資家さんが、スルガ銀行だけで2万人くらいいるわけです。
そして、恐ろしいことに、地方の築古マンションにフルローンを出していた銀行はスルガ銀行以外にも沢山あるんです。表沙汰にはなっていませんけどね。
そう考えると、2万人どころではないです。
おそらく今後、運営に困る不動産投資家が続出し、社会問題化すると思われます。
現時点で、社会問題になっていないのは、まだ破綻している人が少数だからです。
スルガ銀行がフルローンを融資していた方は、基本的に700万円以上の属性が良い方です。
中には源泉徴収を改ざんしていた人もいたようですが、勤務先名称までは改ざんできないでしょうから、それなりに大手のサラリーマンが多いと思います。
そのような高収入のサラリーマンは、年間150万円くらいの赤字ならば、数年の間は持ちこたえることができるわけです。
まあボーナスなくなるなーくらいな感じです。
自己破産すると、勤務先にもバレちゃうので、皆さん必死に返済を続けます。
これが、今の状況です。
ただ、築古マンションはそのうち、大規模修繕の時期がやってきます。
雨漏れしたり、給排水設備が壊れたり、エレベーターが故障したりします。
すると、1,000万円単位の修繕費用が必要になるわけです。
年間150万円ならなんとか補填できても、1,000万円以上になるとお手上げでしょう。
そして、そのタイミングで返済に行き詰まる可能性が高いです。
この窮地を脱出するための方法
最後に、このような窮地(ピンチ)に陥っている方向けに、僕なりの脱出方法をお伝えします。
残念ながら、何もしないと確実にゲームオーバー(破綻)です。
そのため、適切なアクションをすぐに起こす必要があります。
金融機関に金利値下げを交渉する
自己破産されると困るのは銀行も同じです。
特に、スルガ銀行問題が発覚し、どの銀行も問題が大きくならないように対策に乗り出しています。
そのため、まずは銀行に収支がマイナスであることを正直に伝えましょう。
そして、収支を改善するために貸出金利を下げる交渉をするのです。
例えば、今回のケースで金利を4.5%から1%に低減するとします。
すると、年間のキャッシュフローは△146万円から、63万円のプラスになります。
年間のキャッシュフローがプラスになれば、時間をかせぐことができます。
そのため、まずは金利を下げて、キャッシュフローのマイナスを減らすことを優先しましょう。
すぐに不動産会社に売却依頼をする
そして、並行して売却に向けて動きましょう。
幸いに、まだ完全に出口は閉じていません。
不動産投資だけ見ると状況は厳しいように見えますが、その他の世界は、まだ好景気の真っ只中にあります。
上場企業の1/4は最高益を更新していますし、株価も高値を維持しています。
そのため、潤沢な資金を持った法人や、会社経営者が現金で購入してくれる可能性があります。
それに、資産をもたないサラリーマンには融資は閉まりましたが、銀行はまだまだ一般企業向けの融資は積極的です。
一般企業の資産運用としてであれば、収益不動産に融資が出る可能性があります。
そのため、すぐにでも不動産会社に売却依頼を行いましょう。
大事なことは、確実に売却することです。
そのため、欲を出して少しでも儲けようなんて思わないことです。
売却価格は、残債以下の金額に設定しましょう。
隠れ破綻に注意
上記のケースのように、年間の収支もマイナスだと、投資に失敗していることに気づくことができます。
一方で、不動産投資の難しいところは、年間の収支では、プラスなんだけれども、実質的に破綻している隠れ破綻の人がいることです。
つまり、物件の売却可能価格が残債を大きく下回っていて、売るに売れない状態になっている方です。
債務超過の状態ですね。
建物の価値は、毎年どんどん減っていきます。
つまり、売却価格は下がっていくということ。
残念ながら今後、不動産価格が上昇することはしばらくの間ないでしょう。
むしろ、東京オリンピックが終わると同時に、一層下落スピードを早めると思われます。
そのため、もし債務超過の状態になっている方がいれば、速攻売却に向けて動いたほうが良いです。
自分の物件の売却価格が残債以下なのかどうかわからない方は、一度不動産会社に売却査定をお願いすると良いと思います。
ちなみに、売却査定をするならば、大手不動産会社6社が参加しているすまいValueにに依頼することをオススメします。
このすまいValueは、日本の大手不動産会社6社が共同で運営している不動産売却ポータルサイトです。
参加している不動産会社
- 三井のリハウス(三井不動産リアルティ)
- 住友不動産販売
- 三菱地所ハウスネット
- 野村の仲介(野村不動産)
- 東急リバブル
- 小田急不動産
売却するなら、絶対に大手不動産会社に依頼したほうが良いです。
それは買い手の心理を考えるとわかります。
初心者の方が不動産を購入しようとしたら、まずは安心の大手不動産会社に行きますよね。
そして、不動産を一番高値で買ってくれるのは、このような初心者の方なので、結果として大手不動産会社に売却依頼したほうが高値で売れるのです。
また、大手不動産会社であれば、豊富な売却実績があるので、最新の顧客動向、金融機関の情勢を踏まえた売却価格を正確に算出することが可能です。
『自分の物件がいくらで売却することができるのか?』を把握しておくことは投資家にとって大切です。いざとなったら、すぐに売却に動けますからね。
そのため、僕はすぐに売却するつもりがない物件も定期的に査定に出しています。
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