先日NHKのクローズアップ現代で、消費者の間で投資のニーズが高まっていることが取り上げられた。
色々と示唆に富む内容だったため、僕なりの見解を伝えてみたい。
株を運用する人急増! 投資ブーム再来
番組では、株式の投資セミナーが満員御礼状態であることを例に引き出し、消費者の間で株式投資熱が盛り上がっていることを伝えている。
NHKによると株式投資を行っている人は過去最高の延べ5,000万人にも登っていると言う。
あのバブル時代よりも株式投資を行っている人が多いというから驚きだ。
バブル期と現在の違い
しかし、バブル期と現在では投資家の心理が大きく異る。
バブル期の投資家を動かしていたのは、「もっと儲けたい」という欲だった。
NTT株が簡単に2倍の価格に急騰し、連日高値を更新する日経平均に日本国民が夢を見た。もっと儲けて贅沢をしようぜ!イエーイ!
まあ、僕自身バブルを体験していない世代なので、諸先輩方のご経験を基に想像するしか無いのだが、皆ハッピーな時代だったというのは事実のようだ。
皆明日の生活がもっと良くなることを夢見て、株式や不動産にお金をじゃぶじゃぶと投入していた。
一方で現在の投資家を突き動かしているのは「不安」だ。
戦後3番目の長さの好景気に突入したと言われても、あまりピンとこない。
賃金はわずかに増えたが、消費税や社会保険料は毎年上がっているので手取り金額はむしろ減っている。
5年前に比べると年収500万円の人で、手取りが25万円近く減っているらしい。僕自身の体感も同意見だ。給料は少しずつ(本当に少しですがw)上がっているが、手取りはむしろ下がっている。
また、年金不安もマスコミによって煽られている。
つい10年くらい前は60歳で定年と同時に年金がもらえて、しかも退職金もたっぷりもらえたので、住宅ローンも無事に完済。
年に数回の海外旅行ができるくらいリタイヤした人は余裕があった。
最近では、65歳にならないと年金がもらえない。一方で、サラリーマンとしての終身雇用はほぼ崩壊しているため、リストラによって60歳前に会社を追い出されるリスクも高まっている。
というより、ほとんどの人が定年まで同じ会社に勤め続けることはできないんじゃないか。
あの名門電機メーカーの東芝やシャープも大量にリストラしている。
となると、年金がもらえるまでの数年間~十年くらいは会社に頼らない方法で稼がないといけない。
更に年金受給年齢は今後70歳に引き上げられようとしている。
60歳まで会社に入れたとしても、10年間無収入期間が確定だ。確かにこう考えると、どうやって人生後半戦を食っていくかは不安に思えてくる。
投資に救いを求める日本国民
政府も既に年金だけでは国民の老後をサポートできないことがわかっているからか、最近盛んに個人に投資を勧めてくる。
イデコとかいう個人年金保険も登場し、税制上の優遇を設けている。
簡単に言うと、もう国でめんどう見きれないから、後は自分で自分のことはめんどうみてねということだ。ひどい国だねまったく。
こういう状況なので、番組の中でも主婦が高い利回りを求めて外貨建ての保険商品を購入していた。
また、一方で会社を定年退職したサラリーマンが毎月の年金収入では赤字になるため、色んな証券会社を回って、株式投資に参入しようとしていた。
本当に猫も杓子も投資の状況である。しかし、同じ投資に走るのなら、バブル期のように夢を見て投資の世界に入ってほしい。
だって、将来不安があるから投資じゃあ、楽しくないでしょう。僕だったら嫌だなあ。
勉強もせずに楽して投資しようとする
投資で勝つためには、相当な知識とノウハウを身につけることが必要だ。そのためには相当な時間を勉強に当てる必要がある。
よく言われていることだが、ある分野で一人前になるためには1,000時間の勉強が必要とのことだ。
僕も中小企業診断士の資格を取得するのに大体1,000時間かかった。ある程度正しいと思っている。
当然、投資にも勉強はつきものだ。
ただ、不安に突き動かされて投資の勉強をしても絶対に楽しくない。
だから、勉強は長続きしないと思う。
その結果、みんな楽して儲けようとして、投資信託のような高い手数料の割にリスクの高い商品に手を出してしまう。
番組の主婦もリタイヤしたサラリーマンも証券会社の窓口に足を運んでいるが、勉強している形跡はない。
ある程度勉強してから出ないと、プロの餌食になるだけだ。株式投資は5%の人だけが利益を残し、95%の人が元本を減らす強者のゲームだ。
投資を少しでもしたことのある人なら感覚的にわかると思うが、株式投資で勝つのは本当に大変だ。
政府、マスコミ、証券会社はこの事実をひた隠しにして、無責任に個人に投資を勧める。
不動産投資も同じ
今回の番組では株式投資が取り上げられたが、不動産投資も似たような状況である。
不動産投資を専門に扱う不動産会社やアパートメーカーの広告を見れば簡単にわかるが、どの会社も顧客の不安を煽る形で不動産投資を進めている。
将来の年金不安解消のためにマンションを持っておきましょうよと。
こうして、不安にかられた消費者は業者に勧められるがままに投資用マンションを購入する。
そして、いざ所有した後、現実的には空室を埋めるのも大変で、しかも費用もかかり、大して儲からないという現実に気がつくことになる。
不動産投資で継続的に利益を出していくためには、相応の経営ノウハウと知識が必要になる。管理会社に丸投げで利益が残せるほど甘くない。
将来不安から投資に踏み切った投資家は例外なく投資を楽しんでいない。
楽しんでいないということは、勉強するのが苦痛なのだ。
だから、知識・ノウハウが身につかず結果として失敗する可能性が高くなる
投資を楽しめる人だけが成功する
投資に勉強は必須である。
アタリ前のことだ。
つまり、勉強をすることを楽しめる人でないと投資は行わないほうが良い。
逆に言うと、「投資が好きな人」でないと投資を行わないほうが良い。
まだ、バブル期のように自分の欲望に忠実に投資に前のめりになったほうが健全だと思う。
不安に突き動かされて投資するのでは、絶対に楽しい投資はできない。
本来投資とはとても楽しく、エキサイティングなものだ。
これから不動産投資を始める人は、自分が不動産と投資が好きなのかどうか?を自問自答したほうが良いと思う。
好きこそものの上手なれだ。