こんにちはJOJOです! 昨今少し厳しくなってきたとはいえ、まだまだ融資はユルユルな状況。そんな状況だからこそ、アクセルを踏もうと思えばいくらでも加速できるのが現在。
皆さんの中には、融資が緩い今こそチャンス!とばかりに物件検索に余念がない人も多いと思います。
ただ、融資が緩く、不動産投資市況が過熱している今こそ、冷静に見る目が必要。
不動産投資は良く、ミドルリスク・ミドルリターンなんて言われます。株式投資やFXに比べてドーンと儲からないけど、そんなに損するリスクも少ないと。
確かにこの評価は正しいとは思いますが、だからと言って、誰でも成功できるかというと、そこまで甘くないのが現実。
今回は、年収800万円もあったにも関わらず損切り(失敗)せざるを得なかったケースを紹介します。特に初心者の方にはこのケースをしっかりと頭に入れてから不動産投資に参入して欲しいと思います。
高属性の方にとって、物件購入は簡単
ある素人投資家の方のケースです。ここではBさんと呼びましょう。
Bさんは一部上場企業に勤務の営業マン。年齢は40歳。会社では順調に出世して、年収も800万円に到達していました。奥さんと子ども二人のごく普通の幸せな家庭を築いていました。浪費せずに貯めた貯金は500万円。せっかく貯めた貯金の運用先を検討中でした。
そんなBさんですが、リーマンショック時に会社でリストラが実施されて、先輩たちが泣く泣く会社を去らないといけない姿を見ていて、いつまでも会社にしがみついていることのリスクを感じていました。
また、友人の中には不動産投資で成功し、若くして会社を辞めて悠々自適のリタイヤ生活を送っている方がいました。
そんな姿を見ていたBさんは、自分も将来の備えとして不動産投資を始めることにしました。
Bさんはインターネット上で様々な情報を収集していましたが、ある日不動産仲介会社が主催するセミナーが目に留まりました。
このセミナーでは、有名不動産投資家も講演予定だったため、参加してみることにしました。
鋭い方は既にお気づきかもしれませんが、このセミナーはよくある不動産会社と投資家がタッグを組んで、セミナー参加者に物件を購入させるパターンです。
まあ、物件を売りつけるのが目的だと分かった上で、後学のため参加するのなら良いのですが、この種のセミナーの言うことを真に受けるのは危険。
このセミナーは「知識をつけすぎると、頭でっかちになり、行動力がなくなる。まずは、最初の一棟購入へと踏み切る勇気が大切だ」という方針でした。
Bさんは書籍での勉強をほとんどしない状態で、このセミナーに出席し、セミナー講師の言うことをまんまと信じ込んでしまいました。
著名不動産投資家が勧めるがままに、不動産会社がセミナー参加者のために特別に用意したという物件を購入することにしました。
業者から見せられた事業収支のプランはとても魅力的。頭金はほとんど入れずに購入でき、しかも購入初月からキャッシュフローはプラス。既に提携金融機関での融資審査も終わっているため、あとはBさんの購入意思次第。
著名投資家の華々しい成功事例も紹介されてすっかりその気になったBさんは、何の疑いも持たずにその事業収支のプランを信じ込み、物件購入を決意しました。
Bさんは結局、この不動産業者から3棟の物件を購入。年収800万円のBさんは、一年のうちに3棟で合計2億5000万円の物件オーナーになったのです。
手持ちの500万円は購入時の初期費用に使ってしまったため、物件総額を提携金融期間からフルローンで借り入れることになりました。つまり、2億5000万円の借金です。
一年のうちに、シロウトが2億5000万円もの借金ができるのか?と不思議に思う方もいると思いますが、それを可能にしてしまうのが現在の融資情勢です。
国債の運用で利益が上げられなくなった銀行、特に地銀は収益の柱として不動産投資向け融資に積極的に取り組んでいる。そして、この種の銀行とタッグを組んだ不動産会社が審査をスムーズに通すために投資家の代わりにぱっと見、良くできた収支シミュレーションを作成してくれます。
そのため、Bさんのように高属性の方は、文字通りハンコさえ押せばいくらでも購入できてしまうのが現状です。
うまく活用すればこのような融資情勢は投資家にとってメリットですが、残念ながらBさんの場合マイナスに作用してしまいました。
物件購入後半年で既にキャッシュフローがマイナスへ
Bさんがどのような物件を購入したのか紹介したいと思います。
- 1つ目の物件
立地:北関東の地方都市の駅から徒歩20分
構造/築年数:築24年の木造アパート
利回り:8.7% - 2つ目の物件
立地:福岡県郊外 最寄り駅からはバスで10分
構造/築年数:築28年の軽量鉄骨アパート
利回り:8.5% - 3つ目の物件
立地:札幌市内の最寄り駅から徒歩10分
構造/築年数:築35年のRCマンション
利回り:9.0%
まず、大きな問題があるのは1つ目と2つ目のアパート。既に耐用年数をオーバーしている物件。木造や軽量鉄骨は基本的に22年しか耐用年数が無いので、それを上回る築年数だと減価償却期間が4年しか取れません。
もちろん、既に沢山物件を所有していて、節税対策としてわざと耐用年数オーバーの物件を購入する投資家もいます。4年で建物全てを減価償却できるので、その期間は節税になるからです。そして、減価償却期間が終了したら売却してしまいます。
ただ、Bさんの場合は最初の物件としてこの種の物件を選択してしまいました。
それでもまだ建物の割合を多くするなどして、4年間の間は減価償却費用を大きく計上できるように売り主と交渉するという方法がありました。そうすれば少なくとも4年間は所得税を圧縮できるからです。
ただ、Bさんは上記のような事情をまったく知らず、仲介する不動産会社も早々に売買をまとめたかったため、売り主と交渉をせず、建物と土地の比率は、ほとんど土地にしてしまったのです。つまり、建物の割合がないので、減価償却費をほとんど計上することができません。
そのため、Bさんは購入してからわずか2年ほどでデットクロスに陥ってしまいました。
デットクロスとは、年間のキャッシュフロー収入よりも、借金の元金返済や支払い税金のほうが大きくなってしまうことです。つまり、現金が足りないという状況です。
なぜこのようになるかというと、主要因は減価償却費用が少ないか、そもそも減価償却期間が終了していることが挙げられます。減価償却費用は会計上は損失扱いになりますが、現実にキャッシュが減るわけではありません。そのため、多くの不動産経営において減価償却費=キャッシュフローとなることが多いです。そのため、減価償却費が取れなくなると、会計上黒字になってしまい、大幅に税金を支払うことが必要になってキャッシュフローがマイナスになるのです。
しっかりとデットクロスのことを勉強してから不動産投資を始めれば、このような危険な物件を購入することはないのですが、Bさんの場合は不動産会社からなんのアドバイスも無いまま買い進めてしまいました。
また、3つ目の物件にも問題がありました。
3つ目の物件はRC造の築35年なので、まだ減価償却期間が残っています。ただ、前の所有者が適切に修繕を行なっていなかったため、購入してから半年でいきなり雨漏りが判明しました。
慌てたBさんは地元のリフォーム会社に相談すると、すぐにも大規模修繕が必要な状況でした。地方の大型のRCですので、修繕費用は1,000万円もかかります。
おまけにこの3つ目の物件は購入時空室率が40%を超えていました。当初の目論見では購入後3ヶ月で満室にする予定でしたが、ほとんど空室は埋まりませんでした。恐らく適切なリフォームを施して、適正な家賃に減額すれば入居付はできたのでしょうが、Bさんはリフォーム投資と家賃減額を渋ったために空室が続いていました。
最初あった貯金の500万円はすでに物件購入の初期費用として手元にありません。
こうして、毎月のキャッシュフローがマイナスに陥ったBさんは、泣く泣く物件を全て売却することにしました。
ただ、残念なことに物件自体も高値掴みしてしまっていたBさんは、売却時に値段を下げて売却せざるを得ませんでした。幸いなことに、現在不動産市況は良いため、そこまで大幅に値引きせずとも売却することができたのですが、このままでは残債が残ってしまいます。
そのため、残った残債は親戚から借金をして、なんとか銀行の抵当権を外し、売却することができました。
Bさんの手元に残ったのは数千万円の借金だけです。ただ、破産しなかっただけBさんはマシだったといえるかもしれません。
まとめ
このように、融資が緩い現在では、属性が良い人は、収益性が高くない物件でもポンポンと融資を引いて購入することができます。ただ、購入ができるということと、その後も黒字で運営ができるということはまったく関係ありません。そのため、業者やコンサルタントに任せずに、しっかりと自分で収支シミュレーションを立てることが必要です。
もし自分で収支シミュレーションを立てるノウハウと知識が無いと思ったら、まだ不動産投資を始めるべきではないと思います。もっと勉強をすべきことが沢山あるからです。
不動産投資は立派な賃貸経営です。経営に必要なノウハウと知識はしっかりと身につけた上で、不動産投資を始めることが肝要です。
自分で調べ、学び、不動産投資の原則である「安く買って、良く回し、高く売る」を愚直に繰り返す。これが、不動産投資で勝つためのたった一つの秘訣なのです。
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