建築費の高騰が続いています。
その主要因と言われているのが、木材価格の高騰。
いわゆるウッドショックですね。
アメリカでは木材価格がコロナ前に比べると3倍以上にまで上昇しているようです。
建築費総額に占める木材(プレカット)の割合は2~3割程度なのですが、それでも建築費総額でみても1割り程度値上がりしているようです。
実際に僕が現在建築している木造アパートの建築費も概算見積から1割以上値上がりしています。
『このまま木材価格が高騰し続けたら、もう木造で建てられないんじゃないか?』
と心配になるかもしれません。
ただ、良いニュースとしては、高騰を続けていた木材価格がピークアウトした兆(きざ)しがあります。
次のチャートはここ1年間の木材の先物価格推移を表しています。
出典:ブルームバーグ
2021年5月7日に最高値をつけて以降は急落しています。
先物の価格を見る限り、ウッドショックはピークアウトしたと考えて良いでしょう。
このまま木材価格が落ち着いてくれば、最近急騰した建築費も落ち着いてくるのでしょうか?
ただ、僕は建築費が今後下がる可能性はないと考えています。むしろ上昇を続けていくと予想します。
これから自宅や収益不動産を購入しようと考えている人にとってはゲンナリする話だと思いますが、資本主義の世界では基本的にインフレが進行します。
資本主義は永続的な経済成長を前提とした社会システムですから、経済成長=インフレが継続しない限り持続不可能なのです。
この資本主義の原則を考えると、残念ながら建築費は今後も上がり続けるのは間違いありません。
特に僕は以下の5つの理由から建築価格は今後も上昇を続けると考えています。
- 過去から一貫して建築費は上がり続けている
- 木材先物価格はピークアウトしたけど、1年前に比べると価格は2倍
- 鉄も価格は上昇している
- 輸送価格も上昇している
- 不動産販売は絶好調
今回は今後建築費が上がり続ける5つの要因を解説していきます。
過去から一貫して建築費は上がり続けている
日本はデフレが続いているなんていますが、建築費の過去の推移を見てみると事実は違うことがわかります。
以下のグラフは構造別建築費の過去50年間の価格推移です。
出典:建築着工統計(国交省)
1992年のバブル景気真っ只中で一度建築費は大きく高騰しますが、その後バブル崩壊で下がっていきます。
ただ2005年頃から再び建築費は上昇に転じます。
その後、リーマンショックで一時的に下落しますが、アベノミクス以降は再び上昇し続けています。
この過去50年間の推移を見ると建築費は一貫して上昇を続けていることがわかると思います。
特に建材のほとんどを輸入に頼っている鉄筋コンクリート造(RC)と鉄骨造の価格上昇は凄まじいものがありますね。
このチャートは2018年までのデータなのでウッドショックによる影響が反映されていません。
将来的に2021年のデータが更新されたら、木造価格も急上昇していると思います。
ポイントは、建築費というものは基本的に値上がりしていくものということです。
木材先物価格はピークアウトしたけど、1年前に比べると価格は2倍
冒頭で木材先物価格はピークアウトしたとお伝えしました。
でも、まだまだ木材価格は高い水準だといえます。
次の図は過去5年間の木材先物価格チャートです。
出典:ブルームバーグ
2021年6月時点の価格が774ドル(1000フィートあたり)ですが、この価格は1年前の2020年6月の1.8倍以上しています。
そのため、アメリカで起こっているように木材価格が過去の3倍にも値上がりしている事態は解消されていくのですが、まだまだ木材価格は1年前の水準に比べると2倍近く高いわけです。
個人的には将来的にはもう少し木材価格は下がると思いますが、コロナ前の水準を下回ることはないと思います。
コロナ後に世界貿易額は急回復しています。
出典:日経新聞
ワクチンが行き届き、世界中で消費が回復していることを考えると、住宅ニーズが減るとも思えません。
木材価格はある程度下落したら、高値で安定するのではないでしょうか。
鉄も価格は上昇している
次に、木材と並ぶ主要建材の一つである鉄鋼の価格推移をチェックしてみましょう。
鉄鋼価格もコロナ前と比較すると高騰しています。
奇しくもウッドショックと同じように直近の高値からはピークアウトしていますが、それでも1年前に比べると1.3倍の高値です。
鉄鋼は鉄骨造だけでなく、鉄筋コンクリート造(RC)の価格にも影響を及ぼします。
最近ニュースで話題になっているのはウッドショックですが、実は鉄骨、RCの価格もしっかり高騰しています。
輸送価格も上昇している
日本は主要建材である木材も鉄も生コンも全て輸入に頼っています。
日本は森林大国なので木材は国産が多いのかと思っていたのですが、実は木材の自給率はたったの3割。
使用する木材の7割を他国からの輸入に頼っています。
そうなると気になるのが輸送コストです。
木材、鉄、生コンを海外から輸送するためには船を使います。
実は世界的な貿易額の増加に伴って、船の運賃も高騰しています。
船の運賃はバルチック海運指数と呼ばれる国際運賃指標で調べることができます。
このバルチック海運指数が急騰しています。
出典:ブルームバーグ
木材の先物価格はピークアウトしていますが、船の運賃はまだまだ高値更新中です。
木材価格自体が下がったとしても、輸送費が下がらなければ日本で販売される木材価格は下がらないでしょう。
不動産販売は絶好調
次に不動産市況を見てみましょう。
2021年5月の不動産市況は相変わらず絶好調でした。
首都圏の中古マンションの成約件数は前年同月比で+95%アップです。
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構
東京、埼玉、千葉、横浜の主要4エリアで4月に引き続き成約件数が急上昇しています。
昨年の4,5月はコロナの自粛期間だったため、今年の中古マンション販売が急回復するのは当然なのですが、成約数だけでなく価格も上昇を続けています。
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構
東京23区の中古マンションの㎡単価は1年前と比べて13%も値上がりしています。
首都圏では不動産が売れまくっているため、市場在庫が急激に減少しています。
そのため、不動産会社の営業担当の多くが『不動産を買いたいお客様は山ほどいるのだが、売る玉(在庫)がない』と嘆いている状況です。
まさにコロナバブルといっても良い状況ですね。
このように中古の販売が絶好調で、在庫が減少してくると、新築を建てるしかありません。
そのため、今後新築需要が減るということは考えにくいでしょう。
まとめ
今まで以下の傾向を解説してきました。
- 過去から一貫して建築費は上がり続けている
- 木材先物価格はピークアウトしたけど、1年前に比べると価格は2倍
- 鉄も価格は上昇している
- 輸送価格も上昇している
- 不動産販売は絶好調
さすがに木材価格が3倍という異常事態は今後解消に向かうと思いますが、住宅ニーズが減少しない限り木材価格は高止まりし続けるでしょうね。
他の主要建材である鉄鋼の価格も上昇しています。
また、国内では大工さんの高齢化が進行し、職人さんの人手不足は深刻化しています。
つまり人件費は今後も値上がりする可能性が高いのです。
そう考えると、仮に木材の仕入れ価格が少し下がったとしても、建築会社が建築価格を下げるとも思えません。
実際に景気動向に関わらず建築価格は過去から一貫して上昇し続けています。
今後新築を検討している方は、建築費用が上昇を続ける前提でプロジェクト収支を計算していく必要があるでしょう。
僕は今建築している新築アパートで大幅に建築費が上昇し、想定以上に自己資金(現金)を投入する羽目になりました。
次の新築では建築費の増加リスクをしっかりと加味してプランニングしていきたいと思います。
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