こんにちはJOJOです! マーケティング戦略を得意とした経営コンサルタント(中小企業診断士)です。
一般的にマーケティング・コンセプトに応じた商品開発として、企業の技術を活かした販売志向ではプロダクト・アウト型、消費者ニーズに応える顧客志向ではマーケット・イン型の商品開発が行われます。
日本も高度経済成長期には、3種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)を求める人々の需要が供給を上回っていたため、長らく技術主導のプロダクト・アウト型の商品開発が行われてきました。
ただ、高度成長も終わり、モノあまりの時代になると、消費者のニーズを細かく反映したマーケット・イン型の商品開発が主流になってきました。
現在の製造業やサービス業において、コールセンターに寄せられる顧客の声を詳細に分析して、商品開発に活かすことは当たり前です。
このように、時代的変遷として、現在は、マーケット・イン型の商品開発が主流となっていますが、最近ではマーケット・イン型の商品開発のデメリットも明らかになってきました。
そして、現在圧倒的な成功を収めているGAFAと呼ばれるIT巨人達は実はプロダクト・アウト型の商品開発を得意としています。
今回は、プロダクト・アウト型製品開発の成功事例としてアップルを例に上げながら、消費者ニーズに応えるマーケット・イン型製品開発と比較して、その成功要因をわかりやすく説明していきます。
マーケット・イン型の商品開発のデメリット
マーケット・イン型の商品開発のデメリットとしては、次の5つのポイントがあります。
- 革新的な商品が生まれにくい
- 総花的で没個性的な商品しか生み出されないリスクがある
- 参入障壁が低いため、競合他社に真似されてしまうリスクが高い
- 顧客のニーズ調査のための費用が高くなる
- 技術力が低下するリスクがある
- 企業としての独自性・一貫性を打ち出しにくい
それぞれ、詳しく見ていきたいと思います。
革新的な商品が生まれにくい
マーケット・イン型の商品開発は、顧客の顕在的なニーズを調査・分析することによって商品開発のアイディア・方針を決めるやり方です。
この顧客のニーズだけを忠実に反映する商品開発のやり方には、確実に一定の顧客を獲得できるというメリットがあります。
一方で、商品開発の素人である顧客が集まっても、既存の常識の範囲内で思いつく商品のアイディアしかでてこないというデメリットもあります。
顧客は最新のテクノロジーに詳しいわけでないため、自分が認識している範囲の中でしか新しいアイディアが出てきません。
例えば、iPhoneのようにボタンではなく、スクリーンそのものを触って操作するというアイディアは、タッチスクリーンの先進技術に関する知識がなければ誕生することはなかったでしょう。
総花的で没個性的な商品しか生み出されないリスクがある
様々な顧客の意見全てに対応した商品を作ろうとすると、全ての顧客に万遍なく受け入れられるような無難な商品コンセプト/デザインになってしまう危険性が高いです。
また、顧客が求める全ての機能を盛り込んでしまうと、それぞれの機能一つにかけられる開発コストが限定的になるため、他社に比べて競争優位性のある機能を実現することが難しくなるというデメリットがあります。
参入障壁が低いため、競合他社に真似されてしまうリスクが高い
マーケット・イン型開発の場合、自社の技術優位性が必ずしもあるわけではないため、競合他社からアイディアを真似されてしまう危険性が高いです。
特に中小企業が顧客ニーズを正確に把握し、世の中に初めての商品を開発したとしても、技術力に優れた大企業は同じような商品を簡単にコピーすることができます。
更に大企業はその大きな資本力でもって、製造ラインを整備し、より低い製造コストで商品を製造することも可能になります。
そうなれば、単なる価格競争に陥り、中小企業に勝ち目はなくなってしまいます。
顧客のニーズ調査のための費用が高くなる
マーケット・イン型の商品開発をするためには、顧客リサーチが非常に重要となります。
ただし、中小企業は大企業と違って自社内に専門のリサーチ部署・人員を確保する余裕はありません。
そのため、既存の顧客のニーズを把握して商品開発しようとすると、リサーチ専門部署を自社内に持つ大企業が有利となります。
調査自体は、調査会社に外注することも可能だが非常にコストがかかります。
特に大規模なアンケート調査を実施する場合は、大量の顧客パネルを抱える大手の調査会社に調査を委託する必要があり、調査費用は莫大になります。
ほとんどの中小企業では一つの商品開発にかけられる調査費用は限られています。
あまり高額な調査費用を投資してしまうと、結局商品価格を上げざるをえなくなり、価格競争力を失ってしまいます。
技術力が低下するリスクがある
マーケット・イン型の商品開発に傾斜し過ぎると、自社内で独自技術を培うことの重要性が軽視される危険性があります。
一般的にマーケット・イン型の企業では、技術部門よりも、営業・マーケティング部門が重視される傾向にあります。
人材も予算も営業・マーケティング部門に重点的に配分されるため、技術部門の能力が低下してしまうからです。
その結果、いくら顧客のニーズを正確に把握したとしても、それを開発・製造する能力が低下してしまい、商品を生み出すことができないリスクがあります。
企業としての独自性・一貫性を打ち出しにくい
マーケット・イン型の商品開発は、顧客ニーズが優先されるため、常に顧客の動向に左右されます。
そのため企業独自の価値観・経営理念を反映した商品を世の中に生み出すことができなくなってしまいます。
顧客のニーズやトレンドは常に変化しますが、その度にまったく異なった分野の商品を開発し続けると、顧客はその企業に対して一貫したイメージを持ちにくくなります。
例えば、景気が良い時代には高級路線で商品開発をしていた企業が、景気が悪くなったからといって価格訴求だけの低価格・大量生産志向の商品開発に移行してしまうと、顧客はその企業に対して一貫したイメージを持つことは難しいですよね。
つまり企業としての個性がなくなり、その企業に対するコアなファンが育たないリスクがあると言えます。
このように、高度成長期以降に多くの大企業が取り入れたマーケット・イン型の商品開発手法には、様々なデメリットが存在することが判明してきました。
次に、現在のIT巨人であるGAFAが取り入れている最新のプロダクト・アウト型商品の成功要因を見ていきたいと思います。
プロダクト・アウト型製品開発の成功事例とその成功要因
プロダクト・アウト型製品開発の代表的な成功事例はAppelが開発したパソコンのMac(マッキントッシュ)が有名です。
ここではMacとWindowsの戦略の違いに注目しながらMacの成功要因を明らかにしていきたいと思います。
プロダクト・アウト型製品であるMac
Macが登場するまでは、パソコンは計算機・事務機器として進化を遂げてきました。
パソコンを操作するためにはコマンドを入力する必要がありました(CUI)。
一方で、Macでは初めてGUI(グラフィックユーザーインターフェイス)が採用され、コマンド入力ができなくても、マウスさえ使えればパソコンが操作できるようになりました。
この卓越したGUIはデザインを仕事とする人々から圧倒的な支持を受け、現在でもデザインを必要とする出版・音楽・映像など創作分野ではMacはデファクトスタンダードとなっています。
また、そのユニークなUIを維持するために、Windowsとは違って基本的にMac OSの互換機は存在しません。
そのため、ユニークなGUIをもったMac OSそのものが差別化として貢献しています。
このユニークなGUIは最初からパソコンユーザーに受け入れられているわけではありませんでした。
Macが世の中に出てきた時点では、パソコンはコマンド入力をすることが当たり前の世界であり、わざわざマウスを使った時間のかかる操作がベースのGUIには懐疑的な人々も多かったのです。
コマンド入力になれているユーザーからすれば、MacのGUIは非効率に見えたからですね。
つまり、当時のパソコンユーザーの声を聞いた上で、Macが開発されたわけではありませんでした。
GUI技術を採用すれば今まで使っていない新しいユーザー層を獲得できるのではないかとのApple独自のアイディア・発想ありきの製品だったのです。
Macはその卓越したGUI技術(オーバーラップするウインドウ、メニュー中心のマウスを使った操作、マルチフォント等)が最初にあって、それらをパソコンに活用する形で製品が開発されてきました。
そのため、Macはプロダクト・アウト型の製品と呼んで差し支えないと言えます。
その証拠に、Appleが世の中に出てきた後に、従来の主要なパソコンのユーザーであったエンジニアに加えて、出版・音楽・映像分野のクリエイターという新しいユーザー層を獲得することに成功しているからです。
マーケット・イン型製品として進化を遂げてきたWindows
一方で、ライバルのWindowsはマーケット・イン型製品として進化を遂げてきました。
WindowsはMacと違って、デザインに関心の高い層だけでなく、幅広いオフィスワーカー全てに汎用的に利用されるパソコンを目指してきました。
そのため、Macを真似てGUIを採用しつつも、Excel、Wordといった事務用アプリケーションの基盤OSとしての進化も重視しています。
また、昔からの主要顧客層であるエンジニアのニーズに応えるために、コマンド入力機能も相変わらず維持し続けました。
また、基本的に他社にMac OSを開放しないAppleとは対象的に、マイクロソフトは他のパソコンメーカーにWindowsを積極的にライセンス提供しました。
つまり、世の中にWindows互換機が大量に出回るような戦略を取っています。
Windows OSは様々なメーカーのパソコン上でも動作するようにその汎用性を高めていきました。
様々な外部デバイス(キーボード、マウス、プリンタ、メモリーカード)との接続も可能になりました。
また、ハードウェアとの互換性だけでなく、Windows上で様々な他社製のアプリケーションが動作する環境も提供するようになりました。
つまり、幅広い利用者、そして幅広いハードウェア及びソフトウェアメーカーからの要望を元に進化を遂げてきたのがWindows OSといえます。
しかし一方でその高い汎用性はパソコンメーカーにとって大きな課題を生み出しました。
汎用性の高さが招いた価格競争
Windowsは高い汎用性を持っているがゆえに、Windowsを搭載するハードウェア自体で差別化することは困難です。
そのため、Windowsパソコンメーカーは激しい価格競争に突入してしまいました。
いわゆるコモディティ化とよばれる現象です。
その結果、IBMに代表される大手企業は競争力を失ったパソコン部門を次々と製造費の安い中国メーカーに売却することになりました。
Macの成功要因
一方で、Appleはその卓越したGUI技術を保持し、GUI技術を搭載したMac OSを外部メーカーにライセンス提供しない戦略のおかげで、価格競争に巻き込まれることなく高い利益率を維持できています。
つまり、Macの成功要因はその卓越したGUI技術にあると言えるのです。
Appleそのものがプロダクト・アウト型企業
Macを生み出したAppleはそのGUI技術を利用して、タッチパネルを初めて採用したiPhoneのような沢山の革新的な製品を生み出しています。
これらの製品は既存のユーザーの声からではなく、Appleの独自の技術、そしてアイディアから生まれています。
まさにプロダクト・アウト型製品開発企業の代表といえますね。
まとめ
このように、GAFAを代表とされるIT企業たちは、顧客の声を取り入れるのではなく、自らの卓越した技術力・アイディアをもとに商品開発を行うようになっています。
それは、ITを代表とされるテクノロジーが、顧客の想像を超えるスピードで進化していることを意味していると言えるでしょう。
つまり、テクノロジーを制覇した企業が、将来のトレンドを作り上げる時代と言えるかもしれません。
これを表すように、人材市場でも、マーケターや営業といった事務職のニーズは徐々に減り、エンジニアや研究者のニーズが高まりつつあります。
ほんの10年前までは、欧米で高給を得るためにはMBAを取得して、外資系の金融機関に務めるのが王道でした。
それが、最近では、大学や大学院でプログラミングやAIを研究して、最先端のエンジニアになったほうが高給が約束されます。
実際に、アメリカや中国の大学生の間では法律・経済といった文科系よりも、理工系の方が人気となっています。
進化のスピードの早いIT業界で今後勝ち残っていくためには、技術開発及び、それを支える理工系人材への投資が重要になると思います。
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