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【新型コロナ】国から賃料猶予要請が来た場合に大家が取るべき対策とは:金融機関に返済猶予を申し込んじゃダメ!

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こんにちはJOJOです! 東京23区でアパート4棟32部屋の大家をしています。

新型コロナで売上が落ちている飲食店から賃料支払い猶予を求める声が日に日に高まっています。

4/11には大阪府の吉村知事が『テナント賃料支払猶予法案を国に提案した』と発言し、世の中の飲食店オーナー達から支持の声が上がりました。

一方で、賃料が支払われなくなることを心配した大家さん達は反対の声を上げています。

商業系のビルを所有している大家さんの元には、既にたくさんの自営業者から家賃を減額してほしいという要求が来ているようです。

確かに飲食店や小売店の売上は激減しており、とても家賃を支払う余裕がない経営者も多いことでしょう。

そのため、家賃の減額や支払い猶予を求めたい気持ちは良くわかります。

実際に海外では既に家賃の支払い猶予を認めている国も増えてきました。

例えば感染者数が世界一のアメリカでは賃料の滞納があった場合でも、120日間は大家は賃借人に立ち退きを強要できないことを規定しています。

イギリスやドイツでも同様に家賃の支払猶予を認める規定が制定されています。

このような状況を鑑みると、今後、日本でも政府・自治体から家賃支払に対する猶予要請が来てもおかしくないですね。

今回は、もし国から賃料猶予要請が来た場合に、不動産投資家(大家)が取るべき対策を紹介します。

結論を先にいうと、次となります。

  • 賃料猶予要請が来て賃貸経営が苦しくなっても、安易に金融機関に借入金の支払い猶予を求めてはダメ
  • 日本政策金融公庫や自治体のあっせん融資制度を利用して、運転資金の新規借り入れを行うべき

それでは詳しく見ていきましょう!

発端は赤羽一嘉国土交通相の発言

家賃猶予を求める動きは、そもそも国土交通大臣の以下の発言がきっかけでした。

赤羽一嘉国土交通相は31日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、テナントビル所有者に対し、入居する事業者からの賃料徴収猶予を検討するよう働き掛ける考えを明らかにした。関係団体を通じ、売り上げが減少している飲食店などから相談があった場合に柔軟な対応するよう通知する。テナントの業種は絞らない。

赤羽氏は「賃料が大変負担になっているという要望がある」と述べた。

日経新聞 2020/3/31

不動産オーナーは今回のコロナでも安定した家賃収入があるから、飲食店などの店子(テナント)側の売上減少を補填してあげるべきということでしょうか。

なんか、不動産オーナーが『お金持ち』という前提で発言されているように見えますね。

確かに地主や企業オーナーといったお金持ちが財テクの一環として賃貸経営を行っていることもありますが、ほとんどの大家さんは借金して不動産を購入しているので、毎月の返済があります。

家賃収入が減れば、借金の返済に行き詰まる大家さんも多いのを国土交通大臣はご存知ないのかもしれませんね。

この国土交通大臣の発言の後、国交省はホームページ上で正式に不動産オーナーに対して『飲食店等のテナント賃料の支払いについて猶予を検討すること』を要請しました。

国交省ホームページ

政府が緊急事態宣言を発令

その後、2020年4月7日に政府が正式に緊急事態宣言を発令しました。

東京を含む全国7都道府県においてバーやカラオケボックスを含む幅広い業種で休業要請が出されました。

東京都では飲食店全体には休業要請は出ませんでしたが、夜19時以降のアルコール提供はNGとなりました。

飲食店にとって、アルコール飲料は利益率が高い商品です。

そのアルコール飲料が提供できなければ、多くの飲食店が赤字に陥ります。

そのため、自主的に休業するする飲食店も数多く出てきました。

僕は品川区に住んでいるのですが、近所の飲食店が軒並み休業に入りましたね。

キャバクラやスナックは当然として、普通の居酒屋も軒並み休業になりました。

半年前にオープンしたお気に入りのお寿司屋さんが無期限休業に入ってしまったことを知ったときは寂しかったですね。

世論が一斉に賃料猶予賛成へ

飲食店やカラオケ店が休業しても、不動産オーナーへの家賃の支払いは必要となります。

そのため、東京都は休業したテナントが家賃の支払いを継続できるように協力金を支給することを決定しました。

東京都は、休業や営業時間の短縮に全面的に協力した中小企業や個人事業主を対象に50万円、または100万円を支給する「感染拡大防止協力金」の概要を15日夜、公表しました。

NHK 2020/4/15

1店舗を運営する事業者には50万円、2店舗以上を運営する事業者には100万円が給付されます。

この50~100万円という金額は都内における家賃を参考に決められたようです。

つまり、テナントは協力金で大家さんに家賃を支払ってねという東京都のメッセージです。

経営者や従業員の給料の補填は、雇用調整助成金(労働者1人あたり最大8,330円の助成)が用意されていますからね。

ところが、この協力金は東京都独自の取り組みで、他の自治体では提供されません。

唯一の例外として、神奈川県が1事業者あたり10万円の協力金を決定しましたけど、東京都とは規模が違いますね。

財源にゆとりがある東京都だから実現可能な協力金だといえます。

東京都以外の自治体では協力金を出す財源がありません。

そこで、大阪府の吉村洋文知事はテナント賃料支払猶予法案をコロナ担当の西村大臣に提案しました。

この吉村知事のツイートは2万件近くの「いいね」を集め、これをきっかけに世論が一気に賃料猶予賛成にシフトします。

このような動きに政治家達がこぞって追随します。

まず、国民民主党の玉木雄一郎議員から「家賃支払いモラトリアム法」の策定を検討する発言が出ました。

その他にも、政府与党・野党からも賃料猶予要望が噴出しました。

このように、国会議員、地方議員を問わず、全ての政治家が完全に賃料支払い猶予を認める方向に動き出しました。

大家さん辛い。。

欧米では家賃滞納による立ち退き禁止

このように国内の政治家や世論が賃料猶予に賛成している背景には、欧米が既に家賃滞納による立ち退きを禁止していることが上げられます。

各国の立ち退き禁止措置

アメリカ 賃料の滞納があっても120日間は立ち退きを強要できない
イギリス 賃料の滞納があっても3ヶ月間は立ち退きを強要できない
ドイツ 賃料の滞納があっても3ヶ月間は立ち退きを強要できない。しかも家賃の支払いは最長で2年間猶予できる。

立ち退きを禁止したり、賃料猶予を要請しても、政府は一円の出費もありません。

負担は全て不動産オーナーです。

各国の政府が一斉に立ち退きを禁止したり、賃料猶予を要請する理由がわかりますね。

賃料猶予が認められると、不動産投資家が苦しくなる理由

でも、大家さんはお金持ちだから、少しくらい家賃が入ってこなくても平気でしょ

国民の皆様の中には、このような感想を持っている人も少なくないと思います。

実際に、大手企業の三菱地所やイオンは自社物件に入居してくれているテナントの賃料猶予を決定しました。

ただ、弱小不動産オーナーの一人として発言させていただくと、『家賃滞納は大家さんにとって死活問題』なんです。

その理由を詳しく解説したいと思います。

ほとんどの大家さんは銀行からお金を借りて不動産を購入したり、新築を建てています。

裕福な大家さんの代名詞である地主さんであっても、実際は借り入れをしている人が大半です。

地主さんは確かに先祖代々の土地をもっていますけど、大量に現金を所有している人は少ないんですね。

そのため、自分の土地に建てるアパート・マンションの建物代金は全て金融機関からの借り入れという人も少なくないのです。

そのため、一見余裕がありそうな大家さんも実は、毎月銀行への返済に追われています

しかも賃貸経営するにあたっては、借入金の返済以外にも沢山の出費があります。

代表例は税金ですね。

『儲かっているんだから、税金払うのは当たり前じゃん!』

と思われるかもしれませんが、儲かってなくても支払わなければいけない税金もあります。

それは固定資産税です。

固定資産税は所有している土地や建物に対してかかる税金のことです。

法人税や所得税と違って、賃貸経営が赤字でも固定資産税は必ず支払う義務があります。

実は賃貸経営における出費の中で、固定資産税の占める割合は非常に大きいんです。

特に建物価値の大きい一棟マンションになると、家賃1ヶ月分以上の固定資産税を支払うケースも珍しくありません。

そして、少しでも賃貸経営で利益が出ると容赦なく、法人税や所得税の納税義務が発生します。

しかも、毎月満室ということはありえません。

僕は賃貸ニーズが高い都内23区で賃貸経営していますが、それでも空室率は5%くらいあります。

現在32部屋所有しているのですが、年間5部屋くらいは退去します。

退去の度にリフォーム費用がかかりますし、新規募集のために仲介会社に広告料を支払う必要があります。

それに退去があってもすぐに入居者が見つかるとは限りません。

そのため、将来の退去や空室に備えて、手元資金をプールしておく必要があります。

こう考えると賃貸経営は決してボロ儲けできるビジネスではありません。

例えば、1億円の賃貸物件を所有していても、手元に残る現金は年間せいぜい200万円くらいです。

1億円の借金背負って、手元に残る現金が年間200万円というのはそんなに割の良い商売だと思いません。

実際に僕も数億円の借金を背負っていますけど、常に借金のプレッシャーがあるので無駄遣いは一切できません。

ぶっちゃけ、賃貸経営を始めてからのほうが生活費は下がりましたね。

『不動産投資始めても全然お金に余裕ないじゃん。ボケナスッ!』と毎日奥さんから罵られております^^;

このように大家さんは毎月家賃収入が入って来るので、一見ウハウハしてそうですが、借金の返済と税金の支払いを終えると想像以上に手元に残る現金は少ないです。

そのため、賃料支払猶予できるほど体力がある大家さんはごく少数だと思います。

大部分の大家さんが毎月カツカツの状態で賃貸経営しており、賃料滞納が数ヶ月続けば資金繰りに行き詰まる人も大勢いると思います。

金融機関へのローン支払い猶予も合わせて検討されるというけれども

そんな大家さんの窮状を知ってかどうか、大阪府の吉村知事は金融機関に対して不動産オーナーのローン支払い猶予も合わせて要請していくと言っています。

また麻生金融担当大臣も都銀や日本政策金融公庫のトップを呼び出して、『資金繰りに困っている企業や個人への返済猶予』を強く要請してくれています。

このような要望が出されているため、資金繰りが厳しくなった中業企業に対しては、金融機関も支払い延期や猶予を認めてくれるケースが増えているようです。

特に大家さんにとって一番多い出費であるローンの支払いが猶予されれば、資金繰りは一気に楽になります。

ただし、不動産投資家(大家さん)は金融機関に対してローンの支払い猶予を申し込んでは絶対ダメです。

なぜかというと、信用情報に傷がついて、次の融資を受けることができなくなるからです。

不動産投資家を含む全ての債務者は金融機関によって次のように5つにランク付けされています。

  1. 正常先
  2. 要注意先
  3. 破綻懸念先
  4. 実質破綻先
  5. 破綻先

この中で、銀行からスムーズに融資を受けられるのは①の正常先に入っている会社だけです。

正常先に対しての貸倒引当金の引当率が0.2%程度であるのに対して、要注意先にランクダウンしてしまうと引当率が2%~5%と一気に跳ね上がってしまいます。

金融機関は貸倒引当金を損失計上しないといけません。

そのため、一度「要注意先」にランクダウンしてしまうと、とたんに金融機関の監視の目が厳しくなります。

決算書はもとより、様々な財務改善計画の提出を求められます。

納得できる財務改善計画が提出できない場合は、容赦なく金利が引き上げられ、最悪の場合は融資引き上げも検討されます。

このように自社が正常先となっているか否かで、借入条件に天と地ほどの差が出ます。

一度「要注意先」にランクダウンされれば、基本的に次の融資は出ません。

融資が出ないってことは、金融機関から大家やめろっていわれているのと同じです。

国や自治体がいくら金融機関に返済猶予するように要請しても、金融機関内部の格付けまではコントロールできません。

不動産オーナーが一度でも返済を滞納してしまえば確実に「要注意先」にランクダウンしてしまいます。

そのため、僕たち不動産投資家は国の口車に乗って安易に返済猶予を申し込んじゃいけません。

賃料猶予要請が来た場合に不動産投資家が取るべき対策

新型コロナの感染はしばらく続きます。

世界でもっとも感染者が多いアメリカのニューヨーク州のクオモ知事は、ワクチンの開発が見込まれている1年半後まで経済活動は再開できないと明言しています。

こうなると東京都が提供している100万円程度の協力金ではまったく足りませんね。

そのため、コロナ感染拡大が長期化すれば、政府や自治体から賃料猶予要請が出される可能性は高いと考えています。

もし賃料猶予要請が出された場合、僕たち不動産投資家はどのような対策を取ればよいでしょうか?

答えは『日本政策金融公庫、自治体のあっせん融資制度を利用して運転資金の新規借り入れを行う』です。

現在、日本政策金融公庫や自治体の公的資金制度は非常に手厚くなっています。

例えば日本政策金融公庫は新型コロナウイルス感染症特別貸付を行っており、前年よりも5%売上が減少した中小企業に対しては最高3億円融資をしてくれます。

売上が20%以上減少していれば、実質的に無利子で融資を受けることができます。

新型コロナウイルス感染症特別貸付ホームページ

また、多くの自治体が独自の緊急資金対策を打ち出しています。

僕が物件を所有している東京都品川区では、直近3ヶ月間の売り上げが5%以上減少している中小企業(個人事業含む)に対して500万円(3年間無利子)の融資をしてくれます。

これは先ほどの日本政策金融公庫と合わせて利用することが可能です。

既に借りている金融機関に対して返済猶予を求めてしまえば、債務者区分が「要注意先」に下がってしまいます。

そのため、上記の公的な融資制度を利用して運転資金を確保し、既存の金融機関への返済原資としましょう。

こうすれば自らの信用情報に傷がつかないため、経済状況が好転した時に新たに融資を引くことができますからね。

一番ベストなのは国や自治体がテナント経営者に賃料分を無利息で貸し付けること

国や自治体が賃料猶予を法的に強制することになれば、私有財産の否定になります。

私有財産の保護は資本主義の根幹をなす大原則であるため、もし賃料猶予要請が出されることがあれば資本主義経済事態が破綻する可能性もあります。

そのため、国や自治体に対しては、できる限り賃料猶予要請を出すことを控えてほしいと考えます。

一番ベストな対策なのは、国や自治体がテナント経営者に賃料分を無利息で貸し付けることです。

そうすれば、テナント経営者はそれを原資にして不動産オーナーに家賃を支払うことができます。

飲食店等の自営業者が家賃を支払えなくなって困っているのであれば、まず国や自治体が支援の手を差し伸べるのが筋です。

不動産オーナーにその救済責任を押し付けるのは明らかに間違ってます。。

もし財源がないのであれば、国債や地方債を発行するという方法があると思います。

国や自治体は多くの不動産オーナーも経営基盤が弱い中小企業であることを忘れないで欲しいと思います。

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